太陽光が支える情報教育インフラ、途上国の無電化地域に高速通信環境:太陽光(2/2 ページ)
情報通信研究機構(NICT)はカンボジアの電力インフラが整備されていない農山村地域で、高速データ通信環境の構築に成功した。NICTの開発した独自のネットワークシステムを、災害用太陽光発電システムと蓄電池を使ったオフグリッドシステムを活用して自立稼働させている。これにより無電化地域でも従来人の手で運ばざるを得なかった教育コンテンツなどを瞬時に共有できるようになった。
基地局の電力を太陽光で、無電化地域でも高速通信を可能に
構築したネットワークシステムの詳細は以下の通り。まず屋内型の情報通信ステーションを首都プノンペンに2局、そこから80キロメートル先のSkun地区に1局設置し、これらを既設の光ファイバー回線で接続した。
次に屋外型の通信ステーションをSkun地区にある携帯電話通信事業者の鉄塔、そこから北方約15km先にある同事業者の鉄塔、さらにそこから北方へ約1km先にあるテレセンターに設置した(図2)。
屋内型情報ステーション3局は、それぞれに750kW(キロワット)級の太陽光パネルと蓄電池で構成するオフグリッドシステムを併設し、無電化地域であっても自然エネルギーによる自立運転を可能にしているのが特徴だ。無日照が続いても最大32時間程度は電力供給が可能だという(図3)。
こうしたネットワークの構築によりプノンペンと電力網の無いテレセンター間で任意データの送受信と共有ができる環境が整った。通信速度は従来の約100倍に相当する毎秒10メガビット程度を実現し、従来は人手で運んでいた教育コンテンツや健康計測データを、テレコムセンターにいながらスムーズに共有できるようになった。
NICTでは今後このネットワーク環境のさらなる活用に向け、英語教育や農業教育など農山村地域の課題解決につながるアプリケーションをカンボジア側と連携して開発し、実証していく計画だ。カンボジアの他にも途上国を中心に電力網や公衆電話網が未整備で、高速通信を利用できない地域が多く存在する。こうした地域であっても、今回の事例のようにNerveNetを用いれば自然エネルギーを活用して高速な通信環境とデータ共有環境が提供できる。NICTでは農業や外国語教育、遠隔からの健康管理や健康診断の提供など、途上国の課題解決の1つとしての利用が期待できるとしている。
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