コンクリートを使わない太陽光発電所、3万枚のパネルで2400世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
茨城県で10年以上も放置されていた宅地開発計画の跡地を利用してメガソーラーが運転を開始した。大量の太陽光パネルを設置するためにコンクリートで基礎を造る方法ではなく、地中に杭を埋設してアルミ製の架台を組んだ。エリアごとにパネルの種類を変えた構成で発電量や経年劣化を比較する。
植林や排水設備で景観と防災に配慮
パネルの設置角度は発電所全体で15度に統一している。Looopの太陽光発電システムはコンクリートなどで基礎を造らずに、強度のあるパイプや杭を地中に埋設する方法で架台を設置する仕組みだ。施工の専門会社でなくても太陽光発電所を建設できるようにするためである。春の木ソーラー発電所ではスクリュー式の杭を埋設して、その上にアルミ製の架台を組み上げて太陽光パネルを設置した(図4)。
発電所の周辺に住宅があることから、景観や防災にも配慮した。敷地の外周に土を盛って堰を造り、雨水が敷地外に流れ出ない構造にした。さらに堰の部分にはキンモクセイとツツジを植林して、木が成長すると発電所の中が周辺から見えにくくなる(図5)。
この建設用地は約20年前に不動産会社が宅地を分譲する目的で林地を開発した場所である。ところが宅地開発の計画が破たんしたために10年以上も放置されてきた。当初の目的を変更して太陽光発電所を建設するにあたり、近隣住民から安全性に対する懸念の声もあったことから、特に防災対策には念を入れた。
Looopは茨城県から林地開発許可を取得したうえで、周辺地域を含めた排水設備を取り入れている。発電所に隣接する調整池を買い取り、近隣の住宅からの排水に加えて発電所の敷地内からの排水も受け入れるように改良した。敷地内には排水管を通して雨水が調整池に流れる構造になっている(図6)。これから太陽光パネルを設置する3つ目のエリアでは、地中に水を集める浸透池を整備する。
茨城県は日射量に恵まれていて、メガソーラーが続々と誕生している。そうした中で県内を流れる鬼怒川(きぬがわ)が2015年9月に決壊して大きな被害が発生した。川の近くにあった太陽光発電設備が損壊したために、被害が拡大してしまう問題も発生している。近隣住民の不安を解消するためにもメガソーラーの防災対策が欠かせない状況だ。
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