電力の契約数を伸ばす東京ガスと大阪ガス、セット割引と電源構成をアピール:電力供給サービス(2/2 ページ)
家庭向けの電力販売の申込件数で東京ガスと大阪ガスがリードしている。すでに東京ガスは24万件を超えて、大阪ガスも3月末に10万件を突破した。電力と都市ガスのセット割引を訴求する一方、CO2排出量の少ないLNG火力と再生可能エネルギーによる電源構成のメリットも強調する。
東京ガスは「LNG火力100%」、大阪ガスは「FIT電気」も
東京ガスと大阪ガスは自社のウェブサイトで「電源構成」の表示も開始した。電力の購入者が料金の安さだけではなくて、電源の種類も判断材料にして選択できるようにするためである。政府が1月に公表した「電力の小売営業に関する指針」の中でも、電源構成の開示を「望ましい行為」として推奨している。
東京ガスは都市ガスと同じLNG(液化天然ガス)を燃料に使った電力を販売するため、電源構成を「LNG火力100%」で表示した(図4)。LNG火力は石油火力や石炭火力と比べて電力1kWhあたりのCO2排出量が2分の1以下と低く、火力発電の中ではクリーンなエネルギーとして訴求しやすい。
現在のところ東京ガスグループが運営するLNG火力発電所は東京湾岸の5カ所にある。発電能力は合計で435万kW(キロワット)にのぼり、そのうち160万kW分を東京ガスが販売できる(図5)。一般家庭の電力使用量に換算して300万世帯分に匹敵する。さらに神戸製鋼所が2019〜2020年に栃木県で運転を開始する120万kWのLNG火力発電所の電力も東京ガスが全量を買い取ることが決まっている。
大阪ガスもLNG火力を中心に、再生可能エネルギーによる「FIT電気」を7%加えた電源構成で販売する計画だ(図6)。FIT電気は固定価格買取制度で買い取った電力のことで、太陽光や風力などCO2を排出しない電源を使う。ただしFIT電気の買取に伴う費用は電力の利用者すべてから徴収するために、政府はFIT電気のCO2排出量を火力発電などを含めた全国平均で計算するように求めている。
大阪ガスは電源構成とともに、政府が望ましい行為として推奨する電力1kWhあたりのCO2排出係数も表示した。再生可能エネルギーの買取分などを加えた調整後の排出係数は0.368kg-CO2/kWh(CO2換算キログラム/キロワット時)になる見込みで、関西電力の2014年度の実績値(0.523 kg-CO2/kWh)と比べて3割も低い。
大阪ガスは大阪湾岸に展開する都市ガスの製造所の構内に大規模なLNG火力発電所を所有するほか、グループ会社が和歌山県内で風力発電所を運転している(図7)。このほかに4月1日の小売全面自由化に合わせて、家庭に設置した燃料電池「エネファーム」で発電した電力の余剰分を買い取るサービスも開始した。
一方で都市ガス会社には2017年4月1日のガス小売全面自由化が迫る。LNGを大量に調達できる電力会社が家庭向けに都市ガスを販売開始することは確実だ。それまでのあいだに電力と都市ガスのセット契約を可能な限り増やしておくことが最重要の課題で、都市ガス会社は引き続き電力の販売に全力で取り組む必要がある。
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