「ご当地電力」が四国にも、「坊っちゃんプラン」で電力会社より安く販売:電気料金の新プラン検証シリーズ(31)(2/2 ページ)
電力の地産地消を推進する「ご当地電力」が全国に広がってきた。四国では地元を舞台にした有名な小説から名づけたメニューで電力を販売する。標準の「坊っちゃんプラン」は月間使用量が200kWh以上の家庭で四国電力よりも割安になる。「マドンナプラン」や「赤シャツプラン」もある。
「マドンナプラン」は四国電力の新メニューに対抗
このほかのメニューには「マドンナプラン」「赤シャツプラン」「山嵐プラン」の3種類がある。小説の中では主人公の坊っちゃんが思いを寄せるマドンナだが、料金プランでは四国電力が4月1日に投入した新メニューに対抗する戦略商品の位置づけだ。
四国電力の新メニュー「スマートeプラン[タイプL+]」がターゲットになる。毎月の使用量を30分単位で計測できるスマートメーターを使うメニューで、時間帯によって電力量料金の単価が変わる。9時〜17時の「昼間」は使用量によって単価が3段階に分かれる一方、17時〜23時の「夕方」と23時〜9時の「夜間」は一律の単価を適用する(図3)。
2つのプランを比べると、基本料金の最低額だけ「スマートeプラン」のほうが安く、それ以外は「マドンナプラン」のほうが安い。基本料金は月間で使用した電力量の30分間の最大値で決めることになっている。最低は10kVA(キロボルトアンペア)で、家庭で使う100Vの電圧で100Aの電流を消費した場合に相当する。オール電化の住宅のように、数多くの電気製品を同時に使う家庭でないと10kVAを超えるケースは少ない。
「マドンナプラン」は基本料金が「スマートeプラン」よりも割高になる場合があるものの、電力量料金の単価が常に安くなり、両方を合わせた毎月の電気料金では割安になる可能性が大きい。夜間の単価はわずかな差だが、昼間の単価は最大で3円以上も安い。
家庭・商店向けの低圧(契約電力50キロワット未満)のメニューの中では、四国電力の「従量電灯B」と「低圧電力」も多くの需要家が契約している標準的なプランである。「従量電灯B」は契約電力が6kVA以上の大型の住宅や商店などに適用するメニューで、これに相当するのが「赤シャツプラン」だ。基本料金・電力量料金ともに「従量電灯B」よりも安い単価を設定した(図4)。
もう1つの「低圧電力」は業務用のエアコンなどを使う商店や工場を対象にしている。7月〜9月の「夏季」と10月〜6月の「その他季」で電力量料金の単価が変わる。これに対抗する「山嵐プラン」でも基本料金と電力量料金の単価をすべて安く設定した(図5)。電力の使用量が多く見込める家庭や商店に向けては、電気料金が四国電力よりも確実に安くなるメニューになっている。
坊っちゃん電力は現在のところ電源構成を明らかにしていないが、地域の太陽光発電の電力を固定価格買取制度の単価よりも高く買い取るサービスを実施中だ。電力の地産地消を推進するためには、太陽光以外を含めて地域の再生可能エネルギーで作った電力を大量に調達することが今後の課題になる。
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