超小型の木質バイオマス発電装置が北秋田市に、道の駅と工場で5月に運転開始:自然エネルギー(2/2 ページ)
フィンランドで開発された木質バイオマスを燃料に使う発電装置が日本国内でも5月に稼働する。秋田県の北秋田市にある道の駅では、駐車場の一角に設置して電力と温水の供給を開始する予定だ。フィンランドのメーカーの日本法人も本社兼工場を同市内に開設して工場の電力に利用する。
25台で1MWのバイオマス発電も可能
同時に供給できる熱エネルギーは電力に換算して100kW分に相当する。家庭で使われている燃料電池の「エネファーム」と同様に、電力と熱を供給できるコージェネレーション(熱電併給)システムとして使うことが可能だ。通常の火力発電と比べて、約2倍のエネルギー効率を発揮できるメリットがある(図5)。
Volter 40の標準的な利用方法では、熱のうち40%程度を燃料の木質チップの乾燥に使って、残りを温水や空調に使う。道の駅たかのすとVolter Japanでも当面はチップの乾燥と温水で利用する予定だ。
Volter 40には木質チップを自動的に供給するフィーダー(燃料供給装置)をオプションで付けることができる。フィーダーの先端の回転部分が木質チップをかき集めて、パイプを通じて発電装置の上部から送り込む方式である(図6)。
同様に木質チップを燃焼した後に出る灰も、発電装置の下部に設けられた排出用のパイプの内部でスクリューが回転しながら外に送り出す仕組みだ。発電装置を稼働させるにはオートとマニュアルの2つのモードがあり、通常はオートモードで自動的に運転を開始できる。
Volter 40の価格は発電装置の本体と電力変換用のインバーター、木質チップフィーダーを含めて約4000万円(税込み、工事費は別)である。木質チップは含水量を15%程度まで減らした状態で1日に約1トンを消費する。発電した電力は固定価格買取制度で売電することもできる。
日本国内の販売にあたっては、再生可能エネルギーによる発電設備の開発や管理を手がける電現ソリューションが総代理店になった。同社でVolter 40の販売を担当する分散電源開発事業部の速水直行部長によると、「3月に発表して以来、全国各地から予想以上の引き合いがあり、すでに10件程度の導入がほぼ決まっている」。
特に森林資源の多い地域から引き合いが多く、温水を大量に使う温浴施設や介護施設、食品工場や農業・養殖業などが中心だ。Volter 40は同じ施設の中に複数台を設置することも可能で(図7)、合計25台を使って1MW(メガワット)の発電設備を導入するプロジェクトも日本国内で進んでいる。
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