2015年度の販売電力量は前年から3.2%減少、17年前の水準に戻る:電力供給サービス
電力会社10社が2015年度に販売した電力量は7970億kWhにとどまり、1998年度以来17年ぶりに8000億kWhを下回った。前年度と比べても3.2%の減少で、震災後の4年間では最大の減少率を記録した。オフィスなどの業務用が5.0%減ったほか、工場で利用する産業用の需要も2.8%減少した。
電気事業連合会がまとめた2015年度の販売電力量は7970億kWh(キロワット時)で、前年度から259億kWhの減少だった(図1)。電気料金の平均単価を1kWhあたり20円で計算すると、電力会社10社の合計で5000億円以上の売上が減ったことになる。
前年度からの減少率は3.2%になり、震災後の4年間では最大だ。家庭が利用する「電灯」は2.3%の減少にとどまったものの、企業や自治体が利用する「業務用」は5.0%減と大きく落ち込んだ。さらに従来は減少率が低かった工場などの「産業用」も2.8%減少した。業務用・産業用ともに過去4年間で最大の減少率である。
産業用の販売電力量を主要業種別に見ると、需要が最も大きい自動車や電機などの「機械」では1.7%の減少で、減少率は前年度から1.3ポイントも拡大した(図2)。次いで需要が大きい「鉄鋼」は6.9%減の大幅な落ち込みだ。このほかの業種でも前年度と比べて減少率が軒並み大きくなっている。
電気事業連合会は夏(6月〜7月上旬)の気温が低めに推移して冷房需要が減り、冬(12月〜1月上旬)の気温が高めに推移して暖房需要が減ったことを理由に挙げる。しかし実際には家庭と企業・自治体で節電効果が年々高まっていることに加えて、企業・自治体のあいだでは新電力へ契約を切り替えるケースが増えている。2016年度からは家庭の離脱も始まり、販売電力量がさらに減ることは確実だ。
電力会社の販売電力量は2007年度の9195億kWhをピークに、東日本大震災が発生した2011年度から減少が続いている(図3)。2015年度の販売電力量は17年前の1998年度(7990億kWh)と同じ水準に戻った。ただし当時と比べて「電灯」の需要は260億kWh多い状態で、業務用と産業用の「特定規模需要」の減少が大きい。
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