太陽光発電による世界一周プロジェクト再開、ハワイから米国西海岸へ飛行中:自然エネルギー
蓄電池の故障などで9カ月間にわたって休止していた「Solar Impulse 2」の世界一周飛行計画が再び動き出した。現地時間の4月21日(木)午後4時15分に米国ハワイ州のオアフ島を離陸して、西海岸のカリフォルニア州まで太陽光発電だけで飛び続ける。飛行時間は62時間を予定している。
太陽光発電と蓄電池で飛ぶ「Solar Impulse 2」は2015年3月9日にアラブ首長国連邦のアブダビを離陸して以降、7月3日に米国ハワイ州のオアフ島に着陸するまで、合計8回の飛行を続けてきた。その間には悪天候のために予定外で名古屋空港に着陸するアクシデントがあったほか、名古屋−ハワイ間の飛行中に蓄電池が過熱するトラブルも発生した。
最も重要な機器である蓄電池が正常に使えなくなったために、ハワイで修理と設備の増強を実施して、テスト飛行を繰り返してからプロジェクトの再開にこぎつけた。現地時間で4月21日の16時15分(日本時間の22日1時15分)に、パイロットのベルトラン・ピカール氏を乗せてオアフ島のホノルル空港を飛び立った(図1)。
向かった先は米国西海岸のカリフォルニア州マウンテンビューにあるモフェット空港である。飛行距離は約3500キロメートルで、62時間(2日+14時間)かけて太平洋上を飛び続ける予定だ(図2)。当初の計画では米国西部の内陸にあるアリゾナ州のフェニックスが候補地だったが、最終的に4カ所の中からマウンテンビューを選択した。マウンテンビューはサンフランシスコの南に広がるシリコンバレーの一角にある。
米国内では西海岸から中部と東海岸のニューヨークまで飛んだ後、さらにヨーロッパの南部かアフリカの北部を経てアブダビまで戻る。総距離は3万5000キロメートルになり、飛行時間は合計で500時間に及ぶ見込みだ。出発前の計画では5カ月間で世界一周を完了する予定だったが、機器の故障と悪天候で大幅に延びている。
しかしSolar Impulse 2の目的は短期間に世界を一周することではなく、クリーンエネルギーの太陽光発電だけで長距離を飛行することにある。そのためにボーイング747と同等の長さの翼の上に1万7000枚の太陽光パネルを搭載している(図3)。発電能力は最大66kW(キロワット)で、モーターを使ってプロペラを駆動する方式だ。
昼間に発電して余った電力は蓄電池に貯めて夜間の飛行に利用する。蓄電池の容量は164kWh(キロワット時)である。Solar Impulse 2は夜間に15kW程度の電力を必要とするため、満充電の状態だと10時間くらい飛ぶことができる。ただしハワイに到着するまでは蓄電池に冷却装置を備えていなかったことから、名古屋−ハワイ間で温度が上昇し過ぎて故障の原因になった。現在は冷却装置を付けて運転している。
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