スマホの充電を壁から行う時代か、戸田建設らがワイヤレス給電建材を実証:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
戸田建設とワイヤレスパワーマネジメントコンソーシアム(WPMc)は、建設材に埋め込んだワイヤレス給電の実現を目指し、住環境の一部を切り出した実証装置を製作した。実際の住環境に近い実証を進めることで2〜3年での技術課題の解消を目指す。
1カ所を電源につなぐだけで部屋中をカバー
作成した実証設備では、30センチメートル角のパネル上にコイルを形成し、このパネルを組み合わせることで自由に壁面や床面をカバーするというものだ。1カ所の送電コイルで複数の中継コイル上に磁界を発生させ、コイル平面から距離を離しても、機器類に給電ができる状態となる。パネル1枚1枚に電源を用意しなくても1カ所に電源をつないでおけばよく、設置性が高いことが利点である。さらに、給電対象となる機器がない場合は、磁界も電流も発生しないため、無駄な電力を消費することもない。
送電モジュールの定格能力は3W(ワット)で給電距離は50センチメートル程度まで可能となっているという。この共鳴フィールドの中では例えば、充電機能を持つタブレット端末などは電力消費を低減、もしくは減らない状態を維持できるという。篠原氏は「世界初の“どこでもコンセント”を実現できる」と述べている(図2)。
さらに、建材としての利用を想定し、装置の核となる送電回路と送電コイル、共鳴回路と中継コイルを組み込んだ複合材は厚さ4ミリメートルと抑えることに成功。さまざまな仕上げ建材と組み合わせ、給電機能を組み込んだ複合材として活用の場を想定している。
戸田建設 建築本部 直轄部門 村田プロジェクト室 次長兼技術企画課課長の森一紘氏は「目指しているのは配線のない建築物だ。制御系の配線が無線化の傾向にあるなか送配電系の配線がいつまでも変わらない状況を課題に感じていた。配線の無線化が実現できれば電力や制御系の配線のためだけに壁を壊したり、天井を落としたりするようなことが必要なくなる。メンテナンス性も高まりビルなどのコスト効率を高めることができる」と述べている。現在は「部屋の一角」を模した実証設備だが、今後は「次のステップとしてワイヤレス給電できる部屋まるごとの実証設備を用意する」(森氏)。
戸田建設とWPMcでは今後、ワイヤレス給電装置をさまざまな建材に組み込み、給電能力や耐久性の検証、火災に関する安全性の確認などの実験を実施する予定。「法規制などの問題はあるが、これらの技術的な検証を終え、2〜3年後には商用化にのせられるようにしたい」と森氏は語っている。将来的は事務所、住宅などの室内空間で、ワイヤレス給電方式を実現し、情報機器のワイヤレスネットワークも含めて、「完全なワイヤレス空間」の実現を目指す方針だ。
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