非常時に太陽光と水素で3日分の電力、横浜の港で東芝「H2One」が稼働:蓄電・発電機器
東芝が展開している自立型水素エネルギー供給システム「H2One」が、横浜市の大黒埠頭にある「横浜港流通センター」で運転を開始した。自治体向けでは初の稼働事例となる。災害などでライフラインが断絶された場合でも、再生可能エネルギーから製造した水素と燃料電池で、最大72時間の電力供給が行える。
東芝が横浜市港湾局の「横浜港流通センター」(横浜市鶴見区)に導入した自立型水素エネルギー供給システム「H2One」が2016年4月21日から運転を開始した(図1)。事業継続計画(BCP)対策用として導入したもので、自治体が所有する施設での稼働は初の事例となる。
横浜市は2014年12月に改定した「横浜港港湾計画」の中で、港湾区域におけるエネルギー利用の効率化や災害時を想定したBCP対策の実施など、“港のスマート化”に取り組む方針を掲げている。今回のH2Oneの導入はこの施策の一環だ。
H2Oneは太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電力を使い、水を電気分解して水素を生成する。その貯蔵も可能で、災害時にライフラインが寸断された場合には、貯蔵した水素を使って燃料電池で発電する。今回流通センターに導入したシステムの最大発電出力は25kW(キロワット)、水素貯蔵量は104Nm3(ノルマルリューベ)、供給電力量は69kWh(キロワット時)以上だ(図2)。
災害などによって流通センターへのライフラインが寸断された場合でも、情報収集などに必要な72時間分の電力を供給できるという。平常時は事務所棟内の電力に利用し、電力のピークシフトおよびピークカットに活用する。
東芝はJR東日本向けにもBCP対策用H2Oneを受注しており、2017年春をめどに稼働が始まる予定だ。この他にも長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」内にある「変なホテル」の一部施設にも、再生可能エネルギーと水素を活用して電力を自給自足できるリゾート向けのH2Oneを納入している。こちらは既に運転が始まっている(関連記事:「変なホテル」が電力を自給自足、水素と再生可能エネルギーで)。
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