送電線の復旧工事完了は27日に延びる、対象地区が1つ加わり降雨の影響も:電力供給サービス
熊本県内の電力供給体制を復旧させるために必要な送電線の建設工事が難航している。当初は24日(日)中に完了する見通しだったが、新たに仮鉄塔の建設を必要とする地区が1つ加わったほか、21日(木)から23日(土)にかけて降雨の影響で作業を中断せざるを得なかったためだ。
既報(4月22日):「送電線の復旧工事が阿蘇地区で進む」
4月14日(木)と16日(土)に発生した震度7の地震の影響で、熊本県の南阿蘇村から阿蘇市と高森町を結ぶ2本の高圧送電線が現在も使えない状態が続いている。九州電力は18日(月)から復旧工事に入り、地滑りや地割れによって倒壊のリスクが高い鉄塔・鉄柱がある地区で送電線の代替ルートを建設中だ(図1)。
当初は南阿蘇村の「立野(たての)地区」と阿蘇市の「的石(まといし)地区」で建設工事を進めていたが、新たに南阿蘇村の「中松(なかまつ)地区」でも仮鉄塔1基の建設工事が必要になった。従来の鉄塔のすぐ近くで地滑りが発生していることが判明したためである(図2)。
復旧工事の範囲が拡大したことに加えて、21日(木)朝から熊本県内で降り出した大雨の影響で作業を一時中断せざるを得なくなった。天候が回復した後に各地区で安全確認を実施して、23日(土)の午後から作業を再開した。合計で2日半の作業中断により、当初24日(日)に予定していた工事の完了は27日(水)まで延びる見込みだ(図3)。
九州電力は25日(月)以降も200人以上の作業員を投入して復旧工事を進めていく。再び降雨や余震の影響で遅延する可能性があるが、二次災害を防ぐために安全最優先で取り組む必要がある。その間も各電力会社からの応援を含めて高圧発電機車による緊急送電を続けるため、周辺地域に電力の供給は可能だ。
通常の送電ができなくなっている2本の高圧送電線は阿蘇山(中岳)の北側と南側に10キロメートル以上にわたって延びている(図4)。この高圧送電線から阿蘇市・高森町・南阿蘇村に電力を供給する。
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