三菱重工の相模原製作所、日立の統合EMSでエネルギーコストを5%削減:IT活用
日立製作所が三菱重工相模原製作所(神奈川県相模原市)に導入したエネルギー・設備情報を一元管理する統合マネジメントサービス「EMilia」がこのほど本格稼働した。EMilia導入により世界トップクラスの性能をもつ三菱重工製ガスコージェネレーションシステムの運転を最適化するとともに、その性能を最大限引き出すことで相模原製作所のエネルギーコストを5%削減できる見込みだ。
ガスコージェネレーションシステム(CGS)の製造を行う三菱重工の相模原製作所では、CGSを同製作所内のエネルギー供給にも利用することで、エネルギー使用量の削減に取り組んでいる。東日本大震災以降に計画停電を4度経験したことから同製作所では自社製のガスエンジン発電機による自家発電設備の増強により、事業継続計画(BCP)対応能力を向上させてきた。
その後、エネルギー効率を高めたエネルギー供給システムの構築を目的として、ボイラ・吸収式冷凍機などを使用することでコージェネレーション化を進めており、CGSの最適運転によるエネルギーコスト削減や、エネルギーコスト削減課題の見える化による省エネルギーを図っている。
今回、同製作所に導入した日立製作所の「EMilia」は、これまでのスマートグリッドやビル・工場・エリア向けなどのエネルギーマネジメントシステム事業での同社の実績や、空調機器、蓄電池、さらにCGS、工場やプラントに設置される産業機械に関するノウハウを体系的に整備・融合させたクラウド型の統合エネルギー・設備マネジメントサービスだ。
相模原製作所で稼働を開始したEMiliaは製作所のエネルギーセンターに設置されているガスエンジン発電機6台と、その排熱を有効活用する吸収式冷凍機をはじめとした熱源機器の最適な組み合わせをシミュレーションするエネルギー管理システム(EMS)として機能する。さらに相模原製作所向けの機能として、CGSの最適運転機能を追加している(図1)。
それにより実現した機能は「EMiliaから提供される気象条件と過去の需要実績を元にした翌日の電力・熱の需要予測」「ピーク電力削減、排熱回収の効率向上を実現するCGSの最適な稼働計画の立案」「設備ごとの個別システムを統合した相模原製作所全体の見える化」「統合管理された情報を元に管理者・作業者によるトレンドグラフや帳票をカスタマイズする」など幅広い。
日立では今後もEMiliaを中核製品としてエネルギーマネジメントサービス事業の強化を図るとともに、エネルギーや機器稼働データなどの活用により、企業の経営課題解決に向けたトータルソリューション事業をグローバルに提供・拡大を進めていく方針だ。
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