運転開始から50年の石油火力発電所、役割を終えて高効率の石炭火力へ:電力供給サービス(2/2 ページ)
東京電力は1960年に運転を開始した「横須賀火力発電所」の設備を全面的に更新する。6基の石油火力発電設備を廃止して、最新鋭の石炭火力2基を建設する計画だ。発電コストの低い石炭火力に転換するのと同時に、全体の発電能力を224万kWから130万kWへ縮小して燃料費を大幅に削減する。
CO2削減に向けた取り組みは続く
横須賀火力発電所では東京湾岸の72万平方メートルに及ぶ敷地内に、発電設備や変電所のほか、円筒形の大きな石油タンクが数多く並んでいる(図5)。石炭火力へ移行するにあたり、石油タンクを撤去して屋内式の貯炭設備を建設する予定だ。
敷地の半分近くを占めていた石油タンクがなくなって、発電設備も8基から2基へ減るため、相当な空きスペースが生まれる(図6)。東京電力フュエル&パワーは空き地の利用計画を明らかにしていないが、将来に火力発電設備の増設や太陽光・風力など再生可能エネルギーの発電設備を建設することも可能になる。
政府は国全体のCO2(二酸化炭素)排出量を2030年までに26%(2013年比)削減するために、電力会社をはじめ発電事業者に対して火力発電設備の効率改善を求めている。特に石炭火力はLNG火力と比べてCO2排出量が多いことから、2030年には全国平均で現在のUSCに相当する発電効率まで引き上げる目標だ。
石炭火力ではUSCを進化させた「A-USC(Advanced-USC、先進超々臨界圧)」の実用化が近づいているほか、石炭をガスに転換してから発電する「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle、石炭ガス化複合発電)」、さらにIGCCと燃料電池を組み合わせた「IGFC(Integrated coal Gasification Fuel Cell combined cycle、石炭ガス化燃料電池複合発電)」の実証プロジェクトも始まっている(図7)。
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