電力会社10社すべてが黒字転換も、第4四半期にブレーキかかる:電力供給サービス(2/2 ページ)
2015年度の電力会社の決算は全社が営業利益を上げたものの、先行きは決して明るくない。10社のうち8社が売上高を減らし、4社が利益を減らした。各社とも利益の大半を燃料費の減少と燃料費調整額の差益に依存している。東京電力をはじめ第4四半期から業績が伸び悩む状況も見られる。
2016年度は営業利益が半減する?!
電力会社10社の中で2015年度に最大の増益を果たしたのは関西電力である。前年度は786億円の赤字だったが、一気に3353億円も利益を増やした。しかも収益改善の頼みの綱である原子力はほとんど稼働していないにもかかわらずだ。東京電力と同様に火力発電の燃料費が4771億円も減ったことが最大の要因である(図5)。
原子力発電所を再稼働しなくても、多額の利益を出すことができている。とはいえ販売電力量の減少で売上高が1400億円も減って、今後も販売収入の減少は避けられない状況にある。加えて燃料費調整額のタイムラグによる増益効果が2015年度には約1400億円もあったが、2016年度にはそれほど見込めない(図6)。この2つを合わせると営業利益の8割以上が消えてしまう。
現時点で中部電力と沖縄電力だけが2016年度の売上高と営業利益の見通しを明らかにしている。中部電力は売上高が2000億円以上も縮小して、営業利益は半減する予想だ(図7)。販売電力量はわずかながら増える強気の見通しだが、燃料費調整額の低下とタイムラグによる増益効果の縮小によって売上高・営業利益ともに大幅に減少する。
実際には2016年度の販売電力量を増やすことはむずかしい状況だ。原油とLNGの輸入価格も低下することを予想しているが、さほど下がらない可能性は大いにある。営業利益が半減でとどまれば良いほうで、さらに減少する不安はぬぐえない。他の電力会社が売上高や営業利益の見通しを公表できずにいるのも無理はない。
一方で各社の売上高を確実に増やす要因が1つある。再生可能エネルギーの賦課金と交付金による収入の増加だ。特に九州電力は太陽光発電の購入量が急速に拡大して、売上高を大幅に押し上げている。2015年度は太陽光発電の購入量が前年度から1.5倍に増えた(図8)。
この効果を含めて再生可能エネルギーの賦課金と交付金による売上高の増加が1200億円以上にのぼった。2016年度も同程度の伸びは期待できる。賦課金と交付金は利益には貢献しないが、九州電力は原子力発電所の再稼働によって年間で1000億円以上の燃料費削減を見込んでいる。再生可能エネルギーと原子力で増収増益を果たす新しい収益構造に変わっていく。
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