重油210万リットル分の省エネ効果、日本の燃焼技術をインドに展開:省エネ機器
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はインド鉄鋼省・財務省などと共同で、急増するエネルギー需要に対応する省エネ技術として鉄鋼用加熱炉に2台のバーナーを1ペアとして交互に切替えて燃焼する蓄熱バーナー(リージェネレーティブバーナー)の導入実証事業に合意した。
インドでは急速な経済発展によりエネルギー需要が急増しており、エネルギー・環境問題への対応策として先進国で実用化されている省エネルギー技術導入への関心が高まっている。日本とは閣僚級の日印エネルギー対話や経済産業省主導の日印鉄鋼官民協力会合を開催し、省エネルギー化に向けた方策の検討を進めてきた。
こうした背景からNEDOは、インドの鉄鋼省・財務省、および国営製鉄会社STEEL AUTHORITY OF INDIA LIMITED(SAIL)と共同で高性能工業炉実証事業を実施することで合意し、このほど基本協定書(MOU)を締結した。1990年代に当時の通商産業省およびNEDOの支援を受け、日本の工業炉・バーナーメーカーと加熱炉ユーザーが共同開発した蓄熱バーナー(リージェネレーティブバーナー)技術をインドの製鉄所に導入する。日本では既にさまざまな工業炉に適用されている技術であり、粗鋼生産量や自動車生産台数などの拡大が予想されるインドでの普及を目指す方針だ。
リージェネレーティブバーナーの作動原理は蓄熱体を内蔵した2台1組のバーナーを設置し、一方のバーナーが燃焼している間、他方のバーナーは排ガスを吸引し、蓄熱体を介して排ガスを放出する。このとき蓄熱体は排ガス顕熱により蓄熱される。その後燃焼と排気が切り替わり、燃焼用空気は蓄熱体を介して炉内に供給され、このとき燃焼用空気は高温の蓄熱体によって予熱されるというものである(図1)。
今後2年間で実証サイトであるSAIL社のラウルケラ製鉄所の既設加熱炉を、燃焼負荷が高く燃料使用量の高い予熱帯、第1加熱帯および第2加熱帯の各上部バーナーを蓄熱バーナーに改造(上部帯3ゾーン24台のバーナーを撤去し、リージェネバーナー12ペアを設置)する。それに伴う燃料原単位の向上およびCO2排出量の削減の実証による効果として、同実証サイトで年間100万トンの生産を行う際に、重油換算で年間210万リットルのエネルギー使用量削減効果と、年間6000トンのCO2排出量の削減を見込んでいる。導入の効果測定を行いながらラウルケラ製鉄所をショールームとして、同技術をインドの鉄鋼業界に導入・普及させる計画だ。
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