ガス事業拡大に踏み出す東京電力、24万トンを独占供給:エネルギー管理(2/2 ページ)
電力の小売全面自由化が始まったばかりだが、1年後に控える都市ガス自由化を見据えた動きも進んできた。東京電力は2017年4月から日本瓦斯と同社グループ企業の3社が販売する都市ガスの全量を供給する。さらに都市ガス自由化に向けたアライアンス協議も開始する。
「ガス事業の拡大における大きな一歩」
会見に登壇した東電EP 代表取締役社長の小早川智明氏は今回の提携について「われわれのガス事業の拡大における大きな一歩である」と述べる。東京電力では2013年末に発表した「新・総合特別事業計画」の中で10年後のガス販売量の目標を100万トンとしている。今回のニチガスへの卸供給により、その約4分の1を達成できることになる。
東電EPがガス事業における強みの1つがLNGの安定した調達力だ。2015年度は国内最大級となる2300万トンを調達している。さらに東京電力と中部電力が設立した火力発電用の燃料調達会社であるJERAなどを通じ、調達をさらに強化していく見込みだ。
小早川氏は「LNGの調達力、東京湾内に整備されたガス導管などを強みに、今後も安定的に都市ガスを供給していく。そして国で進められている制度設計の様子をみながら都市ガス自由化に積極的に挑戦していく」と述べる。今回のようなガス事業者への卸売という形だけでなく、東電EPから一般ユーザーへの直接販売についても「販売ができるよう検討を進める」(同氏)としている。自前の熱量調整設備の建設についても検討しているという。
一方のニチガスは都市ガス自由化で約11万件の新規顧客の開拓を狙う方針を掲げた。顧客獲得に向けては「現状より10%程度は価格を下げる必要があると考えている」(和田氏)としており、今後はコスト削減などを進めていく。
東電EPとニチガスは今後、都市ガス自由化を見据え、都市ガス販売における戦略的アライアンス協議も進めていく。両社の電力・ガス販売におけるノウハウを活用した新たなサービス開発にも取り組む方針だ。
関連記事
- 似て非なる電力とガスの小売自由化、市場開放の共通点と相違点
電力に続くガスの小売全面自由化が2017年4月に始まる。全国に3000万の需要家を抱える都市ガスの市場開放に向けて電力会社の動きも活発になってきた。政府は電力と同様に料金規制の撤廃や託送供給の拡大を推進するが、都市ガスならではの同時同量制度や導管の運用ルールに課題が残る。 - “セット割”に勝負を託す、東京電力の新料金プラン
首都圏は小売全面自由化で新たに開放される家庭・商用向け低圧市場の中で、最も激しい事業者間の競争が予想される。その中で現在最大の顧客を抱え、“守る立場”にいるのが東京電力だ。その同社がついに電力料金プランの概要を発表した。 - 家庭向けの電力販売で東京ガスが先行、申し込みが5万件を突破
東京ガスが家庭向けに提供する電力の申し込みが2月23日の時点で5万4000件に達した。新規参入組の中では東京電力の管内で4割のシェアを占める勢いだ。2月1日に電気料金を引き下げた効果が大きく、1カ月足らずで申込件数が5倍に増えた。一方で顧客から不満の声も届いて改善策を実施した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.