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人工知能技術で最適航路を予測、船の燃料消費を5%削減IT活用

富士通研究所は船舶に関連するビッグデータを活用・解析して、実海域における燃料消費や速度などの船舶性能を5%以下の誤差で高精度に推定する技術をこのほど開発した。同技術を用いることで従来誤差の大きかった実海域での船舶性能が正確に予測でき、船舶の性能評価や設計へのフィードバック、船舶ナビゲーションに応用した大幅な燃費改善などが可能になるという。

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 船舶業界では航海が環境に与える影響や航海の経済性・安全性などが大きな課題となっている。2012年の海運が排出する年間CO2排出量は世界全体のCO2排出量の約3%にあたる約9億トンに達し、これを受け新造船に対してCO2排出規制が導入された。また、燃料にかかる年間コストが数千億円規模となるケースもあり、燃料費の削減も求められている。一方、荒天時の運航データを収集・蓄積・解析することにより、安全で経済性の高い船舶の設計や、荒天時の操船に役立てる動きも出てきた。

 そこで富士通研究所では富士通の人工知能(AI)技術「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を活用することにより、実海域における船舶性能を5%以下の誤差で高精度に推定する技術を開発した。独自の高次元統計解析技術により、船舶が実際に運航したときに得られる実測データをそのまま用いて、気象・海象などの様々な条件の影響を同時にまとめて解析することに成功したもの。これにより、水槽実験での人工的なデータではなく、実海域における船舶のありのままのデータに基づいた性能推定が行える。

 物理モデルでは、例えば、風の弱いときから強いときまで、物理現象を一様に単純化したモデルで表現するため、推定精度を高められなかった。(図1-a)。同技術では、様々な実測データを統合した高次元データについて気象・海象などの状況が類似するものを自動的にグループ化し、それぞれのグループに応じた学習と推定を行う(図1-b)。


図1 物理モデルと開発した技術 出典:富士通研究所

 同研究所では同技術を東京海洋大学のウェザールーティングシミュレーションに組み込むことにより、東京からロサンゼルスまでの北太平洋航路で、最適航路を運航した場合、最短航路を運航する場合に対して、燃料消費量が5%程度削減できることを確認している。

 今後は、さらなる予測精度の改善を実施する計画だ。また、同技術を様々な船種、航路に適用した実証を行い、位置情報を活用したクラウドサービス「FUJITSU Intelligent Society Solution SPATIOWL」を通じ、2016年度中にサービス提供することを目標とする。

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