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2020年代に導入できる火力発電技術、タービン1基で高効率に次世代の火力発電ロードマップ(3)(2/3 ページ)

次世代の火力発電は第1〜第3世代まで進化が続いていく。第1世代の技術は実証フェーズがまもなく終わり、2020年代に商用機の導入が活発に進む。石炭火力とLNG火力ともにタービン1基のシンプルな構成で、第2世代の複合発電方式に近い50%前後の発電効率を低コストで実現できる。

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A-USCは2016年度に技術開発が完了

 石炭火力の発電効率を高めるA-USCの技術開発プロジェクトは、ボイラーやタービンのメーカーを中心に構成する「A-USC開発推進委員会」が担っている。すでに要素技術の開発を完了して2015年度から確認試験に入った。実際にボイラーで高温・高圧の蒸気を発生させて、連続運転による信頼性を確認中だ(図3)。


図3 「A-USC」の実用化に向けた試験装置。出典:A-USC開発推進委員会

 A-USCで使う蒸気の温度は700℃を超える。現在のUSCの蒸気の温度は600℃クラスで、そこから100℃以上も引き上げる必要がある(図4)。蒸気の圧力も25MPa(メガパスカル)から35MPaへ高めることが求められる。ボイラーと蒸気タービンを高温・高圧に対応できるように改良して熱量と回転数を増やす。


図4 「A-USC」と「USC」の発電設備。MPa:メガパスカル、HHV:高位発熱量基準(水蒸気の凝縮熱を含めた熱量をもとに算出した発電効率)。出典:A-USC開発推進委員会

 A-USCの技術開発はボイラーと蒸気タービンの確認試験を経て、2016年度内に完了する予定だ。電力会社をはじめ発電事業者は2017年度からA-USCを採用した高効率の石炭火力発電所の建設プロジェクトを開始できる。既設の発電所の設備を更新する場合にはボイラーと蒸気タービンを改造するだけで済み、煙突や貯炭設備などを流用できるメリットがある(図5)。


図5 「A-USC」の導入例(既設の発電所を改造)。AH:空気予熱器。出典:A-USC開発推進委員会

 ただし発電能力が15万kW(キロワット)以上の大型の発電設備を更新する場合には、環境影響評価の手続きに約3年を要する。その後に建設工事に入り、試運転を含めて5年程度かかる。A-USCを採用した大型の石炭火力発電所が運転を開始するのは2025年あたりになる。

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