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浄水場を水車後付けで水力発電所に、落差25メートルで150世帯分の電力:自然エネルギー
東京発電と埼玉県朝霞市が上水道施設における未利用エネルギーの活用を目的に、共同事業方式で「泉水(せんずい)浄水場」に建設したマイクロ水力発電「泉水発電所」がこのほど営業運転を始めた。約25メートルの落差を利用して、150世帯分の電力を発電する。
東京発電と埼玉県朝霞市はマイクロ水力発電事業として、「泉水浄水場」における着水井の更新工事に合わせ、2015年12月から同浄水場内に「泉水発電所」の建設を進めていた。朝霞市が水力エネルギーを提供し、東京発電が発電所を建設して、運転・保守を行う共同事業方式だ。2016年5月9日から営業運転を開始した(図1)。
泉水発電所は埼玉県さいたま市の「大久保浄水場」から送られる水の圧力と流量を利用して発電を行い、発電した電力は再生可能エネルギー固定価格買取制度を活用し全量を売電する。事業期間は20年間。基準有効落差は24.615メートルで、最大使用水量は毎秒0.35立方メートルとなっている。最大出力は63kW(キロワット)だ。
水車は円筒ケーシング・インライン型フランシス水車を採用している。この水車が生み出す年間の発電量は約46万kWh(キロワット時)で、これは一般家庭で約150世帯分の使用電力量に相当する。建設に際しては、着水井更新工事を行う朝霞市とコミュニケーションを図り、機器配置の効率化にも取り組んだ。
東京発電では共同事業方式のマイクロ水力発電所を推進しており、泉水発電所が16カ所目(8自治体と実施)となる。なお、同社の水力発電所が運営する水力発電所は、泉水発電所で合計75カ所となった。
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