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福島県産の水素を東京へ、再生可能エネルギーが200キロの距離を越える:自然エネルギー(2/2 ページ)
東京都と福島県は再生可能エネルギーによる水素の製造から輸送・貯蔵・利用までの取り組みを共同で加速させる。国の産業技術総合研究所を加えた研究開発プロジェクトを通じて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで福島県産のCO2フリーの水素を活用できるようにする計画だ。
福島県で進む「水素キャリア」の実証研究
CO2フリーの水素に関する研究開発では、2014年に産総研が福島県の郡山市に設立した「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」の取り組みが進んでいる。太陽光や風力などの再生可能エネルギーで作った電力を使って水を電気分解する技術をはじめ、水素を貯蔵するための「水素キャリア」の製造技術や、水素から電力と熱を効率よく作り出すコージェネレーション(熱電併給)システムを開発して実証中だ(図4)。
水の電気分解では水素と酸素を低コストで効率よく取り出せるように、大型のアルカリ水電気分解装置の実証を進めている(図5)。さらに製造した水素を液化して輸送・貯蔵する技術では、トルエンとメチルシクロヘキサンの2種類の有機物を使って常温・常圧で液化する「有機ハイドライド法」に取り組んでいる。並行してアンモニアに水素を取り込んで液化する技術も開発中だ。
新たに東京都と福島県が締結した基本協定を通じて、産総研の福島再生可能エネルギー研究所と東京都の環境科学研究所で共同研究に着手する。水素エネルギーの利用範囲を拡大するうえで欠かせないエネルギーマネジメントシステムの構築などがテーマになる。
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