太陽光発電の出力を10分でゼロに、九州電力の出力制御実証で成果:エネルギー管理(3/3 ページ)
九州電力は太陽光発電設備の自動出力制御システムの開発を目的に実施していた実証試験の結果を公表した。出力制御機能付きのパワーコンディショナを利用して指示通りの出力制御が行えた他、短時間で出力をゼロにする緊急出力制御においても電力系統への影響はなかったとしている。
緊急出力制御でも成果、系統電圧への影響はなし
今回の実証では66kV以上の発電設備を対象に、緊急出力制御試験も実施している。66kV以上の発電設備を対象にした専用回線を用いる出力制御システムでは、日射量の予測データをもとに出力制御の値を指示する。日射量予測の誤差が出た場合、出力制御量不足が起きる可能性がある。緊急出力制御はこうした事態を想定したもので、短時間で発電設備の出力をゼロにする。検証のポイントとなるのは出力を急激に減らした場合の系統電圧への影響だ。
実証は先述した実証の翌日となる2016年1月21日に実施した。午前11時30分に緊急出力制御指令を出し、午後12時30分に解除するというものである。実証の結果、出力を支持通りに0%にすることができ、系統電圧への影響も問題ないことが確認できた。しかし九州電力は、試験当日の天候が曇天で出力が低かったため、この実証で適切な評価ができたとはいえないと判断した・
そこで、前日に行った実証試験で出力を100%から0%に制御した午後13時からの実証データを利用し、再評価を行った。午後13時からの約10分間で出力を0%に制御している。この結果を分析した結果、連系電気所の母線電圧が通常の上下振れと変わらず、また監視電圧の上下限も逸脱しておらず、系統電圧対する影響は問題なかったとしている(図6)。
出力制御システムの実用化を急ぐ
九州電力は今回の実証成果について、出力制御システムの実用化に向けた技術仕様を確認できた他、配信事業者システムに必要となる基本仕様を整理できたなど、一定の成果が得られたとしている。今後はさらに高度な実証を行う計画だ。具体的には出力制御が実施される可能性の高い春・秋の軽負荷期を中心に、年間を通じた出力制御の検証や、出力制御量を増やした場合の系統電圧への影響評価などを実施する。PCSメーカーとは今回の成果を踏まえ、出力制御機能付きPCSの早期市販化に向けた取り組みを推進する。再生可能エネルギーの導入量拡大と安定的な運用の実現に向け、早期の成果が期待される。
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