「グローバル環境先進企業」を目指す三菱電機、総合電機の幅を生かし開発加速:省エネ機器
三菱電機は、家庭から宇宙までの幅広い製品分野を持つ強みを生かし、事業部や製品を横断したソリューションを提案することで、エネルギー産業において差別化につなげていく方針だ。
三菱電機は2016年5月23日、経営戦略発表会を開催。2016年度の見通しとともに、2020年度までの中期計画で取り組む内容などを説明した。本稿では、同方針発表会の中で、電力・エネルギー関連の取り組みについて紹介する。
三菱電機は目指すべき企業の姿として「グローバル環境先進企業」を目指している。同コンセプトのもと、「持続可能な社会の実現」と「安心・安全・快適性の提供」という2つの点を実現する事業の運営を進めている。さまざまな事業を運営するなかで、同社が成長けん引事業群として重視しているのが、電力システム、交通システム、ビルシステム、FAシステム、自動車機器、宇宙システム、パワーデバイス、空調冷熱システムの8事業である。
電力システム事業では、発電、送変電から配電まで電力の安定供給に貢献する高効率・低環境負荷なトータルシステムを提供。水素間接冷却方式を適用した大容量・コンパクト・高効率なタービン発電機の提案強化により環境負荷軽減を推進していく(関連記事)。またパワーエレクトロニクス技術の応用による自励式無効電力補償装置「SVC-Diamond」や大容量蓄電システムの提供などを通じ、再生可能エネルギー普及時の電力系統安定化に貢献する方針だ。その他、スマートメーターシステムの供給や発電所の老朽化設備の更新などに取り組んでいく(図1)。
空調冷熱システム事業は、高性能・高効率デバイスと高度な制御技術で、各地域固有の省エネニーズに対応していく方針である。低損失パワー半導体モジュール「フルSiC DIPIPM」搭載により、省エネ性を向上したエアコン製品群の投入や、新冷媒R32採用で環境影響度を実現したエアコン製品の投入などを進める。また、買収したイタリアの業務用空調会社DeLClima(現MEHIT)の統合により、欧州を中心にルームエアコンを中心にチラーを含めた大型空調冷熱システムまで幅広いニーズに対応していく(図2)。
事業間のシナジー創出を強化
これらの各事業の強化に加え、事業間のシナジー効果を発揮することで、新たな価値創出にもつなげていく方針だ。既に実現した事例では、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーの安定化利用のために、中国電力に導入したハイブリッド蓄電池システムがある他、JR塚口駅前(尼崎市)スマートコミュニティなどがある(関連記事)(図3)。
三菱電機 執行役社長の柵山正樹氏は「総合電機としてさまざまな事業を抱える点を強みとしていく。専門メーカーではできない価値を作り出していきたい」と述べている。
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