送るだけで家庭が省エネになるスゴい「レポート」、鍵は行動科学とデータ解析:電力供給サービス(2/2 ページ)
太陽光発電やHEMSなど、住宅分野の省エネ対策にはさまざまな種類がある。こうした施策の1つとして、各世帯に対してあるレポートを「送るだけ」で省エネが進むという実証結果が公開された。住環境計画研究所とオーパワージャパン、北陸電力が2万世帯を対象に実施したもので、約1.2%の省エネ効果があったという。鍵となるのは行動科学とビッグデータ解析だ。
日本全国に適用すれば28億kWh以上の電力削減効果
実証実験の結果、レポート送付の1カ月後は0.9%、2カ月後は 1.2%の省エネ効果を確認できた。仮に月次の省エネルギー効果が1.2%で維持された場合、2万世帯の年間の省エネ効果は約226万kWhになると推計される。こうしたエネルギーレポートの送付を活用した世帯の省エネ施策は既に海外でも行われているが、今回の成果は諸外国の類似事業の早期段階と比べても同等以上の効果に相当するという(図3)。
今回の送付期間は2カ月間のみだったが、その後も継続したと仮定した場合の省エネルギー効果は、1.5〜2.0%程度を見込めるとしている。仮に1.2〜2.0%の省エネ効果を日本全国の世帯に拡大できた場合、年間の電力削減効果は約28〜47億kWh(キロワット時)になる。これは住宅用太陽光発電50〜80万件分の発電量(投資金額0.9〜1.4 兆円)のエネルギー削減ポテンシャルに相当する量だ。
レポート送付世帯の8割が受領を認知
レポートを送付した2万世帯のうち、どのくらいの世帯が目を通したのか。今回の実証ではレポート送付世帯の8割が受領を認知しており、そのうち9割がレポートを閲覧したという。また、レポートを受領した世帯では送付していない世帯より省エネ意識、省エネ行動の割合が高まった。いずれもよく似た世帯との比較評価が「もう少し」の世帯ほどレポートに強く反応し、より省エネ行動につなげる傾向があるとしている(図4)。
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