エネルギー先進国ドイツが認めた日本の技術、集合住宅の電力自己消費を実証:太陽光
NEDOは、NTTドコモ、NTTファシリティーズ、日立化成、日立情報通信エンジニアリングと共同で取り組む「ドイツ連邦共和国におけるスマートコミュニティ実証事業」において、太陽光パネル、蓄電池、ヒートポンプ、HEMSを組み合わせたシステムの実証運転を開始した。
新たに2016年5月30日(現地時間)に実証運転を開始したスマートコミュニティ実証事業は、ドイツのシュパイヤー市の全面協力のもとで実施。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とNTTドコモ、NTTファシリティーズ、日立化成、日立情報通信エンジニアリングと、ドイツのシュパイヤー電力公社(SWS)、住宅供給公社GEWOが共同で行う。事業期間は2015年度から2017年度まで。太陽光発電で発電した電力を地産地消する「自己消費モデル」の確立に向けた技術を導入し、実証する(図1)。
同事業はドイツ・ラインラント=プファルツ州シュパイヤー市内の集合住宅(2棟×16戸)を実証サイトとし、2015年7月から構築を開始。太陽光発電パネル、蓄電池、インバーター、ヒートポンプ、各種センサーおよびHEMS(家庭用エネルギーマネジメントシステム)を組み合わせ、需要家の経済的なメリット拡大や電力系統の安定運用に貢献するモデルの確立に取り組む。
日射量データや各世帯の負荷パターンに基づき、太陽光発電電力やエネルギー消費量(電力、熱)を予測するとともに、仮想の電力料金モデルに応じて、電力系統への逆潮流および需要家のエネルギー料金を最小化するようにHEMSの制御ロジックが構築されており、蓄電池やヒートポンプを最適制御する。また、2棟の集合住宅を「世帯単位」「棟単位」のタイプに分け、それぞれにおいてエネルギー自家消費率最大化を目指し、2018年3月までの約2年間、実際の生活環境のなかで実証システムを運転。その効果、信頼性、経済性を評価していく(図2)。
現在、ドイツは電力需要の20%以上を再生可能エネルギーで賄っており、ドイツ連邦政府はその比率を2020年に35%、2050年に80%にする目標を掲げている。しかし、太陽光発電のコスト低減に伴い、既にグリッドパリティ(再生可能エネルギーの発電コストが、電力系統から購入する電気料金と等しくなること)が成立しており、固定価格買取制度が事実上終了している。このため、太陽光発電設備を設置した需要家に売電するメリットがないなど、太陽光発電によって発電した電力を極力、自家消費し、電力会社に売電しないシステムを構築することが課題となっている。同様の状況は将来的には日本にも訪れるとみられており、ドイツでの実証の成果は日本のエネルギー自家消費の実現にも貢献する見込みだ。
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