充電10分でディーゼル車並の性能、2階建てバスをEV化:電気自動車
東芝など4社はNEDOプロジェクトで電動化が難しいとされていた2階建てバスのEV化に取り組む。開発したEVバスはマレーシアの行政首都であるプトラジャヤ市で実証走行を行う計画だ。同プロジェクトをショーケース化し、日本の技術を活用した省エネな都市交通パッケージ事業の広域展開を目指す。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年6月6日、マレーシアのプトラジャヤ市において、2階建て(ダブルデッカー)EVバスシステムの実証を行うと発表した。日本メーカー4社がこれまで重量の制約上EV化は困難とされていた2階建てバスの開発を行い、同市の都市交通システムの効率向上を目指す。
マレーシアの行政首都であるプトラジャヤ市は、政府機関が集中しており、都市計画としてグリーンシティを掲げている。マレーシアおよび東南アジア諸国連合(ASEAN)地域に向けたEVバスのショーケースとして最適な都市である。
こうした背景からプトラジャヤ市の都市交通システムの効率向上によるスマート化を目指し、NEDOは同市と基本協定書(MOU)を2015年7月に締結。これまで超急速充電システムや蓄電池の長寿命性能など、EVバスシステムの実証事業(実施期間2015〜2019年度)に取り組んできた。今回発表した2階建てEVバスシステムの走行実証はこの事業の一環となるもので、NEDOと同市は2016年6月3日に新たにMOUの改定を行っている。
2階建てバスは道路占有面積と運転手当たりの輸送能力が高く、マレーシアをはじめASEANなどのアジアの人口過密地域で導入が進んでいる。一方、バス車両重量が道路の重量制約上限値に達してしまうことから、EV化は困難とされてきた。今回、この2階建てEVバスの開発に東芝、ピューズ、ハセテック、オリエンタルコンサルタンツグローバルの日本企業4社がこの2階建てEVバスの開発に取り組み、2台を用いてマレーシアのバス運行会社であるPAPSB社と共同で走行実証を行う(図1)。
NEDOによれば開発する2階建てEVバス乗車定員は70人程度を想定しているという。性能面では車両の長さは12メートル、10分間で充電可能でディーゼル並みの運行性能を目指すとする。走行実証は現地に超急速充電システムを設置する他、バス本体に搭載する電池の品質や充電状態、バスの運行状況などを監視できるモニタリングシステムも構築する。NEDOでは本事業をショーケース化してマレーシアがASEANにおけるEVハブとなることに貢献するとともに、日本の技術を活用した都市交通パッケージ事業の広域展開を目指す方針だ。
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