世界基準の1500Vパワコン、米国で評価され日本企業で初の受注:蓄電・発電機器
東芝三菱電機産業システムは、日本勢としては初めて太陽光発電システム用1500V系パワーコンディショナーの受注に成功した。
東芝三菱電機産業システム(以下、TMEIC)は、米国の大規模太陽光発電システム向けに世界最大、最高クラスの単機容量と電力変換効率を実現した1500V(ボルト)系屋外型パワーコンディショナー(以下、PCS)「SOLAR WARE 2700」をこのほど受注した(図1)。
現在、太陽光発電システムのシステム電圧は1000V系が主流となっているが、さらなる高効率化・建設コスト低減を目指した次世代システムとして、1500V系でのシステム構築が世界的に注目されている。1000V系システムと比較して1500V系システムは設備全体での高効率化に加え、機器類の集約化や工事工数の削減効果による建設コスト低減により経済性の高い太陽光発電システムの建設が可能となる。
1500V系システムの導入検討が最も進んでいる米国では、2016年から導入が加速し、2017年後半には新規の大規模太陽光発電システムの過半数が1500V系システムとして採用されると予想されている。また、日本やインド、中国でも1500V系システムの導入が検討されており、数年以内に世界の大規模太陽光発電システムの主流になると期待されているという。
日本勢初の1500Vパワコンを受注
今回、TMEICは再生可能エネルギーの開発・建設で世界トップクラスのjuwi(ドイツ)の米国法人から「SOLAR WARE 2700(2700kW機)」を受注した。このプロジェクトは米国コロラド州北部で建設が進められており、発電容量30MW(メガワット、一般家庭約7800世帯の消費電力に相当)向けとして、2016年6月末に同製品を12台納入予定だ。同社では「日本勢として初の1500V系PCSを受注できたことは、TMEICのグローバル市場での販売実績や、性能・品質・信頼性などを評価頂けた結果であると考えている。今後も業界のトップランナーとして、グローバルに需要の増加が見込まれる1500V系システムへの対応をはじめ、高い性能・品質と信頼性によるベネフィットを提供していく」などとしている。
「SOLAR WARE 2700/2500」は最大直流電圧1500Vdc対応し、世界最大クラスの容量2700kW機および2500kW機をラインアップ。砂漠など過酷な環境にも対応可能な屋外型(周囲温度マイナス20〜50度)で、ファンレス技術を応用した省エネ(定格容量の50%までは自然冷却)と信頼性を向上している。さらに世界最高クラスの電力変換効率98.8%を実現し、スマートグリッドに備えたプラント制御にも対応(遠隔による出力・力率などの制御)する。
同製品を導入することで、大容量化に伴い従来の1000V系PCSと比較してPCS設置台数を約30%削減可能だ。また、昇圧用変圧器やスイッチギヤ、ケーブルなど周辺機器の数量、据付配線工事の削減も期待でき、太陽光発電所の建設コスト削減に貢献する。さらに世界最高クラスの電力変換効率により売電収入の最大化につながり、ファン長寿命化によるメンテナンスコストの削減も実現する。
関連記事
- 笑うパワコン、泣くパネル、太陽光発電各社の決算動向
企業各社の2014年度(2015年3月期)決算が出そろったが、太陽電池メーカーは苦境が目立つようだ。2014年度決算資料などから太陽光発電関連企業の2014年度の動向と2015年度(2016年3月期)の取り組みについてまとめた。 - 11円に下がった米国の太陽光コスト、2020年の大目標へ急接近
米国は2010年から2020年の10年間で、太陽光発電システムのコストを4分の1に引き下げようとしている。最終目標は1kWh当たり6セント(約6円)だ。計画開始から3年目の2013年には11.2セント(約11.2円)を達成できた。 - パワコンを削って収益性向上、熊本の大規模太陽光
双日は2014年12月11日、熊本県にメガソーラー「球磨錦町(くまにしきまち)太陽光発電所」が完成したと発表した。約12.77MWの太陽電池モジュールに対して、パワーコンディショナーの容量を約9MWに抑えた。狙いは収益性の向上だ。 - パワコン不要の太陽光、「交流」でつなぐ蓄電池
日本国内では全くといってよいほど導入が進んでいない太陽光発電向けのマイクロインバーター技術。欧米では同技術の優位性が評価されており、パワーコンディショナーを追い込むほど導入数が増えている。同技術に特化した米企業が、蓄電池をも取り込むシステムを開発。採用された蓄電池は日本製だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.