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40年以上稼働した地熱発電所が小休止、7年後に出力1.5倍で再稼働:自然エネルギー(2/2 ページ)
電源開発が宮城県大崎市で運営する「鬼首地熱発電所」は日本で4番目に稼働した地熱発電所である。40年以上の稼働歴を持つ発電所だが、このほど設備の老朽化を受け設備更新の計画が固まった。2018年度に既存設備を廃止し、新たに出力を高めた発電設備を導入して2023年度に再稼働する予定だ。
既存の敷地を活用
新しい発電設備はこれまでの発電所の敷地内に建設する(図4)。事業実施想定区域は「栗駒国定公園」内にあるため、新たな敷地造成などは行わない。J-Powerによる事前の環境評価では、この新設工事による「鬼首カルデラ」「鬼首火山群」「片山地獄」などの周辺にある景観資源や植物への影響は少ないとしている。
発電方式をダブルフラッシュ方式に
新たに建設する発電設備は「ダブルフラッシュ方式」を採用する計画だ(図5)。通常の地熱発電の設備では、地中から湧き出る蒸気を利用してタービンを回転させる「シングルフラッシュ方式」を用いることが多い。
これに対しダブルフラッシュ方式は蒸気と一緒に噴出する熱水から、二次蒸気を発生させてタービンの回転数を増やす。そのためシングルフラッシュ方式に比べて出力を15〜20%大きくなる利点がある。こうした新設備などの導入により、鬼首地熱発電所の出力は現在の15MW(メガワット)から23MW程度にまで増える見込みだ。
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