電力と利益を地域に還元、宮城県の被災地に先端スマートシティ:スマートシティ(2/2 ページ)
東日本大震災で被災した宮城県の東松島市で、スマートシティの本格的な運用が始まった。太陽光発電設備の導入や自営線の活用によるマイクログリッドの構築、地域新電力との連携など、日本のスマートシティの先端的なモデルケースとして大きな期待がかかるプロジェクトだ。
災害時にも3日間街の機能を維持
防災エコタウン内には、非常用の電源として500kVA(キロボルトアンペア)のバイオディーゼル発電機を設置している。停電などが発生した場合には、約1分後に自動的に稼働を開始する。太陽光発電設備と蓄電池と組み合わせることで、災害などで系統電力が遮断された場合でも、最大3日間は街の機能を平常時と同じように維持できる。
災害時に防災エコタウン内で発電した電力の供給先の選別は、CEMSを通して最適にコントロールされる仕組みになっている(図3)。大震災などで停電が長期にわたる場合は、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで出力が不安定な太陽光発電を安定化させ、病院や地域の避難所となる集会所など、防災拠点となる場所に対して優先的かつ継続的に電力を供給できる。
地域経済の活性化へ
東松島市は防災エコタウン内のマイクログリッドや発電設備などの所有者となるが、その事業運営は宮城県の自治体で初の地域新電力で、一般社団法人の「東松島みらいとし機構」に委託する。防災エコタウン内では東松島市は同機構から電力を購入する形になる。東松島みらいとし機構は、太陽光発電の電力を自営線を通して防災エコタウン内に供給し売電することで利益を得る。自営線を利用しているため、電力会社に託送料金を支払う必要がないというメリットも有る。利益は設備投資の回収や、保守費用に充てていく。
同機構は東松島市、同市商工会、同市社会福祉協議会が共同出資して2012年に設立された。同市内の太陽光発電設備などから電力を購入し、東北電力より安い価格で市内の公共施設や事業者に電力を販売するなど、エネルギーの地産地消と地域経済への貢献に取り組んでいる。こうした地域新電力と協力することで、防災エコタウンの運営を通した収益を市外に流出させず、地域内に還元できる体制を作る。これにより、雇用創出や地域経済の活性化も目指す狙いだ(図4)。
再生可能エネルギーや自営線の活用によるマイクログリッドの構築、地域新電力との連携など、日本のスマートシティの先端モデルケースとして、東松島スマート防災エコタウンの今後の運用には大きな期待がかかる。
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