世界最大規模のCO2フリー水素製造へ、2020年に福島県で運転開始:自然エネルギー(2/2 ページ)
安倍総理が3月に表明した「福島新エネ社会構想」の骨子が明らかになった。注目すべきは再生可能エネルギーによる1万kW級の水素を製造するプロジェクトで、2020年までに運転を開始する計画だ。再生可能エネルギーの導入量を拡大するために、福島県内の送電線の増強にも官民一体で取り組む。
太陽光発電の連系試験も世界最大級
研究開発の中核を担うのは、産業技術総合研究所が2014年に福島県の郡山市に開設した「福島再生可能エネルギー研究所(FREA)」である。国内外の研究者や企業・団体と連携して、水素の製造・輸送・貯蔵技術や太陽光・風力発電の連系技術などの研究開発を進めている(図4)。
この研究所の中には大規模な実証試験設備も整っている。太陽光発電用のパワーコンディショナーや蓄電池を使って、世界で最大級の出力3MW(メガワット)までの太陽光発電による連系試験を実施することが可能だ(図5)。天候によって変動する太陽光発電の電力をパワーコンディショナーと蓄電池で安定させて系統(送配電ネットワーク)に送ることができる。
福島県内では震災の被害を受けた地域を含めて太陽光発電の導入が活発に進んでいる。これまでに固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備の規模は450万kWを超えて、全国47都道府県の中でトップになった。ただし導入量の急速な拡大に対して送電線の容量が追いつかず、地域によっては大規模な発電設備の接続が困難な状況だ(図6)。
太平洋沿岸に近い山間部の「阿武隈・双葉(あぶくま・ふたば)エリア」は風況に恵まれていて、福島県が2015年から推進中の「イノベーション・コースト構想」でも風力発電の重点エリアに設定した(図7)。このエリアは風力発電の拡大に向けて送電線の増強が急務になっていることから、新エネ社会構想の中で電力会社や発電事業者を中心に送電線の整備・管理を担う事業体を設立する予定だ。
福島県では県内のエネルギー需要を2040年までに再生可能エネルギーで100%供給する長期ビジョンを掲げている(図8)。2011〜2015年の4年間でエネルギーの自給率を21.9%から26.6%まで高めた。2018年には30%へ、2020年には40%まで引き上げる計画だ。
再生可能エネルギーの導入量を拡大するのと合わせて、エネルギーを有効に活用できるスマートコミュニティを県内の自治体に広めていく。再生可能エネルギーと水素を組み合わせて、地域全体のエネルギー需給管理をシステムで制御できるようにする。
すでに会津若松市で2014年からスマートコミュニティの実証プロジェクトに取り組んでいるほか、震災の被害を受けた太平洋沿岸の4つの市と町(新地町、相馬市、浪江町、楢葉町)でもスマートコミュニティの導入計画を策定中だ。新エネ社会構想の中で各自治体の実行計画を支援していく。
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