東北最大の地熱資源を生かせるか、福島県の温泉跡地で掘削調査へ:自然エネルギー(2/2 ページ)
山形・福島・新潟の東北3県にまたがる磐梯地域は、東北最大級の地熱資源があると推定されている。現在、福島地熱プロジェクトチームが「磐梯朝日国立公園」で資源量の調査を進めている。2016年度からは、これまでの調査結果を踏まえ、有望な開発地域として特定した磐梯山東部のエリアで実際に掘削調査を実施する計画だ。
2つの調査井を掘削、深さは最長2.3km
これらの結果を受け、3次調査では東磐梯地域の土湯沢温泉跡地で掘削調査を実施する。これまでの地表からの調査で得られた推定値などを、実際に掘削して確認することが一番の目的である。
温泉旅館の跡地で現在は山林となっているエリアに掘削基地を建設する(図2)。調査井は1km(キロメートル)程度はなれた2カ所で掘削する。最終坑径は約22cm(センチメートル)、掘削長は最大で2.3kmを計画している。
2016年6月から掘削基地の建設に向けた土地の造成を進め、同年9月ごろから本格的な掘削工事に入る計画だ(図3)。全ての調査は2017年度中の完了を予定している。その後、掘削調査の結果で地熱資源を確認できた場合は開発調査井の掘削計画を策定し、周辺地域などの合意を得た上で、発電所の建設に向けた事業性調査への移行を判断する。事業性調査では生産井・還元井掘削、実証試験、環境アセスメントなども実施する。
計画が順調に進めば2020年度をめどに発電所の建設に着手できる見込みだが、今回の3次調査の結果が今後のスケジュール策定の鍵を握る。自然公園法上の特別保護地域および第一種特別地域を除いた磐梯地域の地熱資源の河採量は、東北地域で最大となる27万kW(キロワット)が見込まれている。2040年にエネルギー自給率100%を目指す福島県において、今回のプロジェクトを通して地熱発電による大規模な電源を確保できれば目標達成の大きな後押しになる。一方で規制緩和で可能になった国立公園内での事業であり、社会・周辺環境面との両立といった面でも注目のプロジェクトである。
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