電力を安定供給できるバイオマス発電、燃料の確保は地域ぐるみで:再生可能エネルギーの拡大策(5)(2/2 ページ)
全国各地でバイオマス発電の導入量が増えている。特に未利用の森林資源を生かせる木質バイオマス発電が活発だ。限りある地域の資源を長期的に調達できる体制の構築が急がれる。林業と連携した燃料供給システムの確立や、熱を含めたエネルギー利用の高効率化も求められる。
燃料調達の低コスト化に取り組む自治体も
安定した電力の供給源としてバイオマス発電を全国各地に拡大していくためには、地域単位で自立できる事業モデルの確立が重要になってくる。政府が目指す木質バイオマスの地域自立モデルは、木材の調達からチップの製造、さらに燃料のチップを利用する発電所や温泉・病院などの施設を含めて、地域内で資源と資金が効率よく循環する仕組みである(図4)。
木材の調達面では森林に発生する残材の収集システムを構築するほか、間伐の徹底や早生樹の活用による低コスト化を図る。チップの製造工場は発電所の構内に建設して輸送費を抑える一方、燃料を利用する施設にはリース方式による設備の導入を促進していく。
大分県で林業が盛んな日田市では、木質バイオマス発電用の燃料調達コストの低減に地域ぐるみで取り組んでいる。市内の山林を対象に林地残材の収集システムを整備して、生育期間の短い早生樹の利用可能性についても検討した(図5)。すでに日田市内では大規模な木質バイオマス発電所が2カ所で運転中だ。
木材の中には発電に利用しにくいものもある。建築物の廃材などは燃焼効率が低いために、発電用の燃料には適していない。地域で生まれるバイオマス資源を有効に活用するために、岡山県の倉敷市では発電に利用できない木材を使って、工場に蒸気を供給する事業を検討している(図6)。
政府は全国各地で実施中の先行事例を自治体間で共有できるようにする計画だ。林野庁を中心に燃料の供給コストを低減するための技術開発も推進していく。さらにバイオマス燃料やバイオマス発電設備に対する規制を緩和して導入事例の拡大につなげる。
地域のバイオマス資源は木質に限らず、下水の汚泥や家畜の排せつ物、ごみ処理場に大量に集まる廃棄物などがある。急速に広がる木質バイオマス発電に続いて、そのほかのバイオマス資源を活用した発電設備の増加も見込める。導入量の拡大に向けて、バイオマス資源の種類ごとに対応する施策が必要になってくる。
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