電力会社2社に行政指導、工事費負担金の請求で禁止行為:法制度・規制(2/2 ページ)
再生可能エネルギーの発電設備から電力を供給する場合に、電力会社の送配電ネットワークの増強工事を必要とするケースがある。工事費は電力会社と発電事業者で負担するが、その金額の請求に関して電力会社2社に禁止行為があった。国の委員会は行政指導を実施して改善を求めた。
2015年11月に負担金の配分方法を変更
そこで政府は2015年11月に工事費の負担方法を見直して、「効率的な設備形成・費用負担ガイドライン」を制定した。再生可能エネルギーによる発電設備(FIT電源)の接続に伴って発生する工事費についても、原則として全額を電力会社が負担する形に改めた(図4)。
地域の送配電ネットワークの能力を増強すれば、需要家や他の発電事業者・小売電気事業者も恩恵を受ける。こうした考えに基づいて、FIT電源の接続に伴う工事費も電力会社の一般負担に変更した。送配電ネットワークの運転維持費に算入したうえで、電気料金に反映させる仕組みだ。
たとえば出力20万kW(キロワット)の発電設備を新設する場合に、送電線までの工事費は1000万円で済むものの、合わせて変電設備の増強が必要になって15億円もかかってしまうケースを想定してみる(図5)。ガイドラインの制定前であれば合計15億1000万円を発電事業者が負担しなくてはならなかった。ガイドラインの制定後は送電線の工事費1000万円だけを負担すればよい。
発電事業者の負担が大幅に減って、再生可能エネルギーを導入しやすくなった。ただし接続する発電設備の規模に比べて工事費が著しく高額になるケースもあるため、一般負担の上限額が決まっている。
電源の種類別に設備利用率(出力に対する発電量の割合)が高くなるほど上限額も高く設定した。設備利用率が最も高い木質バイオマスは出力1kWあたり4.9万円、最も低い太陽光は1.5万円が上限になる(図6)。この上限額を超えた分は発電事業者が負担する。
2015年度の監査で禁止行為が見つかった2社のケースは時期が不明だ。金額の請求で問題が発生したことから、ガイドラインを制定する以前だった可能性が大きい。ただし制定後でも発電事業者の負担が減ったとはいえ、大規模な太陽光発電や風力発電では負担金が多額になることも考えられる。引き続き電力会社が提示する工事費負担金の内訳を十分に精査する必要がある。
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