世界最高効率の太陽電池モジュールは、シャープが取り戻す信頼の第一歩:太陽光
シャープは「PVJapan2016」に出展し、モジュール変換効率で世界最高を記録した太陽電池モジュールを紹介。経営体制が揺れ動く中でも粛々と技術を磨き続けてきたことをアピールした。
シャープは太陽光発電の総合展示会「PVJapan2016」(2016年6月29日〜7月1日、パシフィコ横浜)に出展し、モジュールで世界最高の変換効率を記録した太陽電池モジュールを紹介した(図1)。
シャープでは2016年3月に台湾の鴻海精密工業からの出資を受け入れ、経営再建を進めることを発表。太陽電池を含むエネルギーソリューション事業部の採算性が悪化していたことから、太陽電池事業の将来性などに対し、周辺からは懸念の声が出ていた。しかし、2016年5月25日に鴻海精密工業の総裁である郭台銘氏と、副総裁の戴正呉氏が署名入りで声明を発表し、エネルギーソリューション事業の拡大を約束した(関連記事)。
これらの流れの中、シャープでは太陽電池モジュールで世界最高効率の31.17%を達成したことを発表。太陽電池において優れた技術力を持つことを示した他、経営体制が揺れ動く中でも粛々と技術開発を進めてきたことを証明した。
シャープ エネルギーソリューションカンパニー ソーラーシステム事業部の事業部長である桃井恒浩氏は「5月の声明発表により、販売店や取引先には説明を進めることができ、徐々に状況は沈静化しているが、一般家庭やエンドユーザーに対しては、説明が十分とはいえず、信頼を取り戻すには至っていない状況もある。こうした中でシャープが信頼を取り戻していくには、技術や製品を次々に世に送り出し、価値のあるメーカーだということを証明していくことしかない。モジュールで世界最高の変換効率を実現したのも、こうした信頼を取り戻す取り組みの第一歩である」と述べている。
化合物3接合型太陽電池モジュール
シャープが開発した世界最高効率のモジュールは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」プロジェクトの一環として開発したものだ。太陽電池の公的測定機関である産業技術総合研究所(AIST)により、31.17%の変換効率が確認されている。
「インジウムガリウムリン(InGaP)」「ガリウムヒ素(GaAs)」に「インジウムガリウムヒ素(InGaAs)」のボトム層を加えた3つの光吸収層で構成され、太陽光をより効率良く電気に変換できる独自の構造を採用したことが技術の特徴である。現在シャープの化合物技術による太陽電池は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙ステーション補給機「こうのとり」をはじめ人口衛星などにも採用されている(図2)(関連記事)。
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