低速の海流を電力に、新潟県沖で2回目の潮流発電実証に着手:自然エネルギー(2/2 ページ)
次世代の再生可能エネルギーとして有効活用への期待がかかる海洋エネルギー。日本国内の実証海域の1つである新潟県の粟島沖で、2回目の実証試験が始まる。発電能力300Wの浮体式発電装置を使って2016年7月6〜8日の4日間実証を行う計画だ。
低速の潮流でどこまで発電できるか
新潟県は2014年10月に1回目の潮流発電の実証を行ったあと、国の支援を受けて2015年7月8日〜12月10日に、粟島の沖合の実証海域で潮流速度の流況調査を実施した(関連記事)。調査は実証海域を東西の2つに分け、西側では7〜9月に、東側では7〜12月に流速を計測した。最大の潮流を計測したのは8月に西側で記録した秒速0.83メートルである。また、東西の2つの海域を合わせた調査期間中の平均流速は毎秒0.23メートルだった(図3)。
日本の周辺海域の多くは粟島と同じく、潮流速度が毎秒1メートル未満である。そのため、日本で潮流発電を実用化するためには、こうした低速の潮流でも安定的に発電量を見込める技術の確立が必要になってくる。粟島の2回目の実証で用いられる垂直軸型の発電機は流況調査の結果を受けて開発したもので、低速の潮流での発電に対応することを目指したものだ。
粟島の周辺海域を活用する潮流発電のプロジェクトは2013年に発足。以降、小型のプロトタイプの開発とその実証、海域の流況調査と着実に成果を重ねてきた。今回、より大型の発電機を利用する2回目の実証で成果が得られれば、プロジェクトはまた一歩前進する。発電装置の開発を手掛ける日本大学と新潟県海洋エネルギー研究会は、将来の実用化時の構想として、現在の約10倍に相当する高さ10メートルの水車を用いた潮流発電機と同時に、太陽光発電や風力発電など活用できるシステムの開発を目指す方針だ。
関連記事
- 海洋エネルギー:潮・波・海水でも発電、2050年には2200万世帯分にも
現在のところ実現性は未知数ながら、将来に大きな可能性を秘めているのが海洋エネルギーだ。発電に利用できる主なものは潮流・波力・温度差の3種類。すべての導入可能量を合わせると一般家庭で2200万世帯分の電力になる。最大の課題は発電コストで、20円台まで下がれば普及に弾みがつく。 - 潮流発電を2018年に実用化へ、環境省が5年間の開発・実証事業
島国の日本にとって海洋エネルギーの開発は将来に向けた大きな課題だ。膨大な潜在量が見込まれる海洋エネルギーの中で、環境省は潮流発電に焦点を当てた技術開発プロジェクトを開始する。2018年の実用化を目指して、発電能力が500kW以上の設備を使った実証事業を推進していく。 - 潮流発電の実用化へ前進、新潟・粟島沖で流速を確認
新潟県は国の海洋再生可能エネルギーの実証フィールドになっている粟島の沖合で、2015年7月〜12月の5カ月間に流況調査を実施した。計測したデータを分析した結果、夏に速い海流があることを確認した。実用化に向けて遅い流速でも安定して発電できる装置の開発を進めて実証試験に取り組む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.