先進国ドイツに見る、太陽光発電O&Mサービスが跳ねるタイミング:エネルギー市場最前線(2/2 ページ)
欧州を中心に全世界で12GW以上の太陽光発電のO&Mサービスを展開するドイツのメテオコントロール。再生可能エネルギー先進国であるドイツでは太陽光発電のO&Mサービスは「入れて当たり前」のものになっているというが、日本でも同様の盛り上がりを見せるのだろうか。メテオコントロールのマネージングディレクターであるマーティン・シュナイダー氏に話を聞いた。
「FITからFIP」で変わる基準
ドイツでは既にFITから市場に直接販売しその価格に一定のプレミアムを付けるFIP(市場プレミアム制度)への移行が進みつつあり、買取価格は変動するものとなってきている。FITでは売電料金で利益を得ようとしてとにかく発電量の最大化を目指す動きが中心となっていたが、こうして価格が変動する状況になると「発電量や送電量のコントロールができる」という点が最も重要になってくるとシュナイダー氏は指摘する。
「発電量をとにかく増やすというよりも、需給を確実にコントロールして最適な時に最適な値段で販売するということが重要になる。そのためには、設備の状況はどうなっていてどれだけ発電するのかという遠隔監視は必須の技術である」とシュナイダー氏は述べている。
遠隔監視はどのタイミングで増えるのか
遠隔監視を含む太陽光発電のO&Mサービスは、現在の日本ではまだ「必須のもの」というほど地位を確立したものではないように見えるが、ドイツではどういうきっかけがあって、市場が形成されてきたのだろうか。
シュナイダー氏は「ドイツは電力システム改革なども含めて日本の10年ほど先を行っているような感じだが、ドイツでも太陽光発電において遠隔監視や制御の技術が必須となってきたのは、電力卸売市場が本格的に稼働してきてからだ。電力が株式市場のように金融商品として市場取引がされるようになり、それらが活発に活用されるようになったことで、エネルギーマーケッターのようなビジネスなども生まれてきた。こうした人々と取引するには『コントロールされた電力』であるという点が必須だ。こういう流れから、ドイツでは遠隔監視やO&Mが定着していった」と語る。
そして「こうした流れは日本でも今後必ず巻き起こると見ている」とシュナイダー氏は述べている。日本でも発電事業者と小売事業者が電力の売買を行える「日本卸電力取引所(JEPX)」が設立され取引が始まっているがまだまだ取引量は小さい。これらがさらに活発に活用されるようになればO&Mサービスなどもさらなる盛り上がりを見せるものと見られている(関連記事)。
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