太陽電池、蓄電池、エコキュートでスマートハウスを目指す三菱電機:変転する太陽光発電市場(5)(2/2 ページ)
太陽光発電市場は2015年度でモジュール出荷量が前年割れをし、市場環境は転機を迎えようとしている。こうした中、主要メーカー各社は何を考え、何に取り組んでいくのか。第5回は、三菱電機の考えと取り組みを紹介する。
太陽電池新製品でこれまで設置できなかったニーズをつかむ
この戦略の軸となる太陽電池モジュールでは6月に高出力の新型太陽電池セルと屋根の形にあわせた多様な形状の組み合わせで大容量の発電を実現する単結晶無鉛はんだ太陽電池モジュール「マルチルーフ」245W(ワット)シリーズ6機種の販売を開始した。同製品はセル内で発生する電子の不活性化を抑えるPERC(Passivated Emitter and Rear Cell)構造とセル内の抵抗損失を減らすSE(Selective Emitter)構造を導入。セルの一辺の長さを0.75ミリ大きくし、セル1枚当たりの面積を拡大(従来比約2.2%)したことなどにより、長方形モジュールで、公称最大出力245Wの高出力を実現(従来品比15W向上)している。
また、以前から採用している6種類の形状のラインアップにより、さまざまな屋根において無駄無く太陽電池モジュールが設置できるようになった。さらに、業界トップの電力変換効率98%の同社パワーコンディショナとの組み合わせにより、電力変換ロスを抑制し、太陽電池モジュールの高出力を最大限に利用することが可能だ。この他、厳しい品質評価基準による製品設計と、設計仕様を維持する厳しい品質管理により、製品の耐久性を担保し、モジュール出力の25年間無料保証を適用している。設置後1年目〜20年目まで公称最大出力80%を保証。設置後21〜25年目まで同72%を保証するもので、パワーコンディショナなどの機器と合わせたシステムトータルで長期間安心して使用できる保証体制を整えた。
この太陽電池モジュールを屋根に設置する新しい施工方法も提案している。従来の耐久性にこだわった「垂木固定」に加えて、同社が新たに特許を取得した「NOJIPOWERねじ」を用いた固定金具の採用により、「野地板固定」でも垂木と同等の設置強度を実現した。これにより垂木がない屋根や垂木が見つけにくい屋根へも設置が可能となり、同工法の導入で屋根の構造に合わせて施工方式を選ぶことができるようになっている。
スマートハウスソリューションを展開
三菱電機では太陽光発電システムやHEMSなどとともに同社のスマートハウスソリューション「ENEDIA」を構成する蓄電システムでも新製品を投入している。3月下旬にはEV用パワーコンディショナ「SMART V2H」を発売。同製品は、太陽光発電システムなどでつくった電気を電気自動車(EV)にためることで、EVを「走る蓄電池」として活用することができる。また、NEC製の小型蓄電池システム「ESS-003007C1」の取り扱いも強化した。
この他、エコキュートの新商品として、省エネ性を向上するとともに、HEMSとの接続による太陽光発電システムとの連携運転を実現した「Sシリーズ」「Aシリーズ」の販売を開始している。各家庭のニーズに合わせて「売電優先」「余剰活用」「太陽光発電出力制御連携」の3つの運転モードの選択が可能。太陽光発電システムの電力を積極的に売りたい場合は「売電優先」モードにセットすることで、昼間のエコキュートのわき上げを停止し、電力の使用を抑制して売電量を増加させる。太陽光発電システムで創った電力を積極的に活用したい場合には「余剰活用」モードを選び、余剰電力を湯のわき上げに活用し、電力会社からの買電を抑制する。さらに、太陽光発電の出力制御が電力会社から出された場合には「太陽光発電出力制御連携」モードとすることで、出力制御中に余剰となった電力をわき増しなどで有効利用する。これらの連携運転の設定はスマートフォンやタブレットで容易に対応することが可能だ(図2)。
連載:「変転する太陽光発電市場」
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