単純なモノ売りはもう終わり、それでもソーラーが成長する3つの理由:変転する太陽光発電市場(7)(3/3 ページ)
太陽光発電市場は2015年度でモジュール出荷量が前年割れをし、市場環境は転機を迎えようとしている。こうした中、主要メーカー各社は何を考え、何に取り組んでいくのか。最終回の今回は今までの取材から太陽光発電市場において取り組むべき方向性について示す。
太陽光発電を賢く運用するO&Mサービス
3つ目のポイントが太陽光発電設備のO&M(運用管理・保守点検)サービスである。先述したFIT後の「自家消費」などを想定した場合「既存の太陽光発電設備の発電能力をいかに長く保ち続けるか」ということが重要になる。太陽光発電設備は、パネルそのものは理論上は半永久的に使用可能だといわれているが、それも正しく管理されている場合に限られる。現実的には出力はどんどん低下するケースがほとんどで、破損して出力が低下するケースなども多いといわれている。今後FITが終了していく流れの中で、自家消費用の独立電源として使用するケースも増えると見られており、これらを実現するためにはO&Mサービスの活用が増えると期待されている。
サンテックパワージャパンの取締役でCOO(最高執行責任者)である山時義孝氏は「出荷量そのものはここ数年のように大きなものが見込めないのは明らかである。しかし、累積出荷量が伸びていくことや使用し続けていくライフサイクルを考えれば、遠隔監視などの運用サービス市場は今後も拡大していく。周辺サービスなども含めた市場認識が重要になる」と述べている。
一方、京セラの戸成氏も「地産地消や自立電源化などへのニーズが高まれば、太陽光発電設備を継続的に維持・管理し、効率のよい発電を維持していく必要性が高まる。こうしたニーズに応えて京セラでは、産業用太陽光発電設備のO&Mサービスを、自社製品以外の設備に向けても開始する」と述べている。さらにこれらのサービスを低圧や家庭用にも広げ、家庭向けの見守りサービスなども展開する計画なども示している(図3)。
単純にモジュールを作って売るだけの時代は終わっている
出荷量の推移を見ても単純にモジュールを販売するだけでメーカーがビジネスを成長させられる環境ではなくなりつつあるのは事実だ。しかし、ここまで見てきたように太陽光発電設備の関連ビジネスが全て減少傾向にあるわけではない。ここ数年の太陽光発電市場は明らかにFIT頼みのバブルの状態だった。しかし、そのためのゆがみが生じていた状態だった。改正FIT法も含め産業として健全な環境になるようにさまざまな施策が進む中で、これらの3つのポイントのように工夫次第では、まだまだ成長できるチャンスはあるといえる。
(連載終了)
連載:「変転する太陽光発電市場」
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