高原に130基の風車を展開、「イノベーション・コースト構想」が前進:自然エネルギー(2/2 ページ)
震災からの復興を目指して2014年に始まった「福島イノベーション・コースト構想」の主要プロジェクトの1つが実現に向かう。太平洋沿岸の阿武隈地域に風力発電を展開する構想に対して、県の公募で発電事業者2社が選ばれた。5つの市町村をまたいで合計130基の風車を設置する計画だ。
完成すれば15万世帯分の電力を供給
風力発電事業の想定区域は南北に約45キロメートル、東西に約12キロメートルの広い範囲に及ぶ(図4)。この区域の中で福島復興風力は西側の葛尾村(かつらおむら)から川内村(かわうちむら)にかけて連なる尾根の上に、合計で80基の風車を設置する計画だ。1基あたりの発電能力は2500kW(キロワット)を見込んでいて、全体で20万kWに達する。
一方のエコ・パワーは想定区域の南側に位置する、いわき市・広野町(ひろのまち)・楢葉町(ならはまち)の境界付近を対象にする。1基で2000kWの風車50基を設置して、10万kWの発電能力を予定している。
2カ所の風力発電所が計画どおりに運転を開始すると、合わせて30万kWになる。年間の発電量は一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して約15万世帯分にのぼる見通しだ。福島県の総世帯数74万のうち2割をカバーできる。
ただし風力発電の環境影響評価には3年程度かかる。その後に建設に着手して完成するまでに2年以上は必要で、実際に運転を開始できるのは2021年以降になる。福島県は2社の仮事業者の計画が具体的に固まった時点で正式に事業者を選定する方針だが、特に問題が生じなければ同じ事業者を選ぶ可能性が大きい。
風況に恵まれた阿武隈地域では、現在までに大規模な風力発電所が2カ所で稼働している。いわき市と田村市にまたがる高原地帯には「滝根小白井(たきねおじろい)ウインドファーム」(2000kW×23基)が2010年12月から運転中だ。田村市と川内村に連なる桧山(ひやま)高原でも震災直前の2011年2月に「桧山高原風力発電所」(2000kW×14基)が運転を開始している(図5)。
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