全国から再生可能エネルギーを集める、バイオマスの電力に続いて水素も:エネルギー列島2016年版(13)東京(4/4 ページ)
東京都は2030年に再生可能エネルギーの比率を30%まで高める計画を推進中だ。他県で作った再生可能エネルギーによる電力の調達量を増やすため、宮城など3県でバイオマス発電の連携プロジェクトを開始した。さらに福島県と共同でCO2フリーの水素を製造するプロジェクトにも乗り出す。
清掃工場の廃棄物は5割以上がバイオマス
人口が密集する東京都では大規模な水道設備のほかにも、大量の生ごみを処理する清掃工場や下水を処理する浄化センターに再生可能エネルギーが眠っている。2015年11月に完成した「練馬清掃工場」では、最新鋭の技術を駆使した高効率の廃棄物発電設備を導入した(図10)。
生ごみなどを1日に最大500トンも焼却できる設備で、発電能力は18.7MWに達する。年間の発電量は一般家庭の電力使用量に換算して4万5000世帯分に相当する規模になる。清掃工場で処理する廃棄物のうち、生物由来のバイオマス資源が5割強ある。発電した電力は固定価格買取制度で売電できる。
東京都内で買取制度の認定を受けた発電設備にはバイオマスが多い。すでに運転を開始したバイオマス発電設備の導入量は全国で10位に入る(図11)。大半は清掃工場などの廃棄物発電が占めている。大都市ならではの再生可能エネルギーの拡大策である。
太陽光発電は広い設置スペースが必要になるため、都内で導入できる場所はさほど多く残っていない。そうした中で有望な場所が駐車場だ。都内各地に数多くある駐車場の屋根に太陽光パネルを設置すれば、太陽光発電の導入量を飛躍的に増やすことができる。
東京都の環境公社は2015年度から「ソーラーカーポート普及促進モデル事業」に取り組んでいる。最初のモデルケースとして2カ所の都営施設にある駐車スペースに、太陽光パネルを搭載したソーラーカーポートを設置した。1カ所は東京湾岸の海浜公園、もう1カ所は郊外にある水道局の給水所だ(図12)。
それぞれ構造の違うソーラーカーポートを組み上げて2016年3月に発電を開始した。発電能力は2カ所を合わせて33kWで、発電した電力は各施設で自家消費する。2020年3月まで運用を続けて導入効果を検証する方針だ。今後さらに導入事例を増やしてコストを削減できれば、都内全域の駐車場に太陽光発電を展開できる可能性が開けてくる。
2015年版(13)東京:「水素で広がるスマートシティ、2020年のオリンピックに電力・熱・燃料を供給」
2014年版(13)東京:「水道から作る大都会の電力、太陽光・小水力・バイオマスの比率を20%に」
2013年版(13)東京:「東京産の電力300万kW創出へ、火力・太陽光・地熱・水力すべて生かす」
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