埼玉で広がる消化ガス発電、下水汚泥から500世帯分の電力を生む:自然エネルギー
埼玉県は県内にある下水処理場で、汚泥処理の過程で発生する消化ガスなどを活用したバイオガス発電事業を展開する計画を掲げている。その1つである「元荒川水循環センター」でのバイオガス発電事業の内容が固まった。大原鉄工所が発電事業者となり、2019年4月から発電を開始する計画だ。年間の発電量は270万kWhを見込んでいる。
埼玉県は2016年7月25日、「元荒川水循環センター」でバイオガス発電事業を行うと発表した。汚泥の処理工程で発生する消化ガスを活用し、事業契約を結んだ民間企業の大原鉄工所が発電事業者として発電を行う。発電した電力は再生可能エネルギーの固定買取価格制度を利用して売電する。発電は2019年4月から20年間行う計画だ。
埼玉県の下水道局は、元荒川水循環センターに下水汚泥の容積を減少させる減容化などを目的に、汚泥消化槽の建設を進めている。汚泥消化槽では汚泥を減容化する過程で、メタンガスを主成分とする消化ガスが発生する。県はこの消化ガスを発電事業者である大原鉄工所に売却する。
大原鉄工所は埼玉県から元荒川水循環センター内の土地を借り受けて、出力400kW(キロワット)のガス発電設備を建設する。消化ガスを利用し、年間に一般家庭500世帯分に相当する270万kWh(キロワット時)を発電する計画だ(図1)。これにより年間1300トンのCO2削減効果を見込めるという。
埼玉県はこの事業によって、既にある資産を生かしながら土地の貸付料や消化ガスの売却料などの収益を得られる。一方、大原鉄工所は消化ガスを利用し、安定的に再生可能エネルギーによる発電事業が行える。官民どちらにもメリットがある形態の発電事業だ。
県面積に占める河川割合が全国1位と水資源に恵まれる埼玉県は、流域下水道を処理する下水処理場を8つの流域で合計9カ所管理している。現在、バイオガス発電事業の展開を進めており、今後も県内の他の下水処理場にも広げていく考えだ(関連記事)。
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