農山村に水力発電を展開、太陽光と2本柱で自給率70%を目指す:エネルギー列島2016年版(15)山梨(3/3 ページ)
山梨県では豊富な水量と日射量を生かして水力発電と太陽光発電の電力が増えている。2030年に電力の自給率を70%まで高める計画で、小水力発電の導入にも積極的に取り組む。超電導方式の蓄電システムや純水素型の燃料電池を再生可能エネルギーと組み合わせて電力の地産地消を拡大していく。
太陽光の電力で超電導の円盤を回す
山梨県の再生可能エネルギーは小水力発電と合わせて太陽光とバイオマスが増えている(図9)。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模では中小水力が全国で4番目になった。太陽光ではメガソーラーを含めて、運転を開始する発電設備が着実に拡大してきた。
現時点で県内最大のメガソーラーは山梨県と東京電力が共同で運営する「米倉山(こめくらやま)太陽光発電所」である。発電能力は10MW(メガワット)で、固定価格買取制度が始まる以前の2012年1月に運転を開始した。このメガソーラーの構内では2015年9月に、リニアモーターカーと同様の超電導方式による蓄電システムの実証試験が始まっている。
直径が2メートルもある円盤状のフライホイールを使った次世代の蓄電システムとして国内外の注目を集めている(図10)。炭素繊維強化プラスチック製のフライホイールを超電導の状態で高速に回転させることによって、電力のエネルギーを運動のエネルギーに変換して蓄電する方式だ。蓄電容量は100kWhまで可能で、最大300kWの電力を充電・放電できる。
このフライホイール蓄電システムを使って、天候によって変動する太陽光発電の電力を安定化させる試みだ。メガソーラーに隣接して1MWの太陽光発電設備を実証試験用に建設した。太陽光発電の出力の変動に合わせてフライホイールが回転して、電力を出し入れすることができる(図11)。再生可能エネルギーの地産地消を推進する山梨県が世界に先がけて取り組む壮大な実証試験である。
ほかにも再生可能エネルギーの電力を有効に活用するシステムの実用化が進んでいる。米倉山太陽光発電所のPR施設でもある「ゆめソーラー館やまなし」では、小水力発電と太陽光発電、さらに水素を組み合わせたシステムが稼働中だ。
小水力と太陽光で発電した電力を蓄電装置に貯めながら、EV(電気自動車)用の急速充電器に電力を供給するほか、ゆめソーラー館の照明にも利用する(図12)。それでも電力が余ると、水を電気分解して水素を発生させてタンクに貯蔵しておく。水素は必要に応じて燃料電池に送り、再び電力を作って館内に供給することができる。
山梨県が2030年度に目指す電力の自給率70%の時点では、太陽光の生み出す発電量が全体の2割以上を占める見込みだ。日中しか発電できない太陽光の電力を効率よく地産地消するためには、余剰電力を活用する仕組みが欠かせない。将来を見据えた先端プロジェクトの役割はますます重要になっていく。
2015年版(15)山梨:「電力は水素と超電導の蓄電池に貯蔵、技術で走るクリーンエネルギー」
2014年版(15)山梨:「南アルプスからの清流で小水力発電、エネルギー地産地消の先進モデル」
2013年版(15)山梨:「富士山のふもとで太陽光を26倍に、2050年にエネルギー自給率100%へ」
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