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低コストな燃料電池へ前進、レアメタル不要の触媒材料を開発:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
燃料電池の普及に向けた課題の1つがさらなるコストの低減だ。電極触媒に用いる白金などの高価なレアメタルがコストを高める一因となっており、こうした貴金属を使わないカーボン触媒の研究開発が進んでいる。芝浦工業大学は窒素含有カーボン(NCNP)とカーボンナノファイバー(CNF)からなる炭素複合材料「NCNP-CNFコンポジット材料」の合成に成功。正電極触媒として実用化できれば、燃料電池などの低コスト化に貢献できるという。
白金触媒と同等の性能、劣化性能では優位に
芝浦工業大学では、開発したNCNP-CNFの複合材料の電極触媒としての性能を検証した。白金担持カーボンと比較した場合、触媒能(電位)に差はあるものの、触媒活性(電流値)は白金触媒と同等レベルの性能を引き出すことに成功したとしている。これは、合成したNCNPの豊富な活性サイト(化学反応が起こる場所)とCNFの電荷を異動させる導電パスの相乗効果が寄与しているという(図3)。
正極触媒としての劣化性能の比較では、市販の白金触媒より優位性が見られた。電流を流してから約11時間後の電流密度は、市販の白金触媒では63%まで減少したのに対し、NCNP-CFNコンポジット材料では85%とより優れた耐久性を示したとしている。また、測定中にメタノールを添加したところ、白金触媒は瞬時にカソード電流密度が減少したが、NCNP-CFNコンポジット材料はほとんど変化がなかった(図3)。
芝浦工業大学は今回の研究成果をベースに、燃料電池などの低コスト化に貢献できる新材料として、企業などと連携して材料の応用や実用化に向けた研究を進める方針だ。
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