電力会社のCO2排出量が1年間に6.3%減る、需要の縮小と再エネの拡大で:法制度・規制(2/2 ページ)
2015年度に電力会社10社が排出したCO2の総量は前年度と比べて6.3%減少した。電力需要の縮小に合わせて火力の発電量を減らしたほか、CO2を排出しない再生可能エネルギーによる電力の買取量が増えた効果だ。九州電力だけは原子力発電所を再稼働させてCO2排出量を15%以上も削減した。
「CO2排出係数」は10社で大きな開き
CO2排出係数は電力を利用する企業が年間のCO2排出量を算出する時の基準値になる。電力会社や小売電気事業者ごとにCO2排出係数が決まり、年間の電力使用量と掛け合わせてCO2排出量を算出する方法だ。電力会社のCO2排出係数は2015年度も大きなばらつきが出た。
最も低いのは中部電力の0.482で、電力1kWhあたり0.482キログラムのCO2を排出する(図4)。次いで東京電力が0.491、関西電力が0.496で続く。これに対してCO2排出係数が最も高い沖縄電力は0.799になり、同じ1kWhの電力を使っても中部電力と比べるとCO2排出量が1.66倍に増えてしまう。
中部電力のCO2排出量の推移を見ると、すでに2014年度の時点で震災前の2010年度を下回っている。震災前にはCO2を排出しない「浜岡原子力発電所」の稼働率が5割前後もあったが、震災後は稼働率がゼロでもCO2排出量は減り続けている(図5)。原子力発電所を再稼働させなくてもCO2排出量の削減が可能なことを示す結果だ。
それでも原子力に依存する電力会社の姿勢は変わらない。沖縄電力と同様に石油火力の比率が高い北海道電力のCO2排出係数は0.676、四国電力も0.669で平均を上回る。石炭火力の比率が高い中国電力は0.700、北陸電力は0.615で、沖縄電力を含めて5社のCO2排出係数が突出している状況だ。CO2排出量の少ないLNG火力へ転換する取り組みの遅れが最大の要因である。
各社のCO2排出係数には固定価格買取制度による再生可能エネルギーの電力を買い取った分も含まれる。2015年度の買取量は前年度から1.5倍に拡大して、全体のCO2排出係数を押し下げるうえで大きな効果を発揮している。ただしCO2排出係数の算出にあたっては、電気料金に上乗せして徴収する「賦課金」を考慮して割当量が決まる。買取量が割当量よりも多い地域では、CO2排出係数(調整後)が実際よりも高くなる。
2015年度は北海道・東北・中国・四国・九州の5地域で買取量が割当量を上回ったためにCO2排出係数が高くなり、残る5地域は低くなった。買取量と割当量の差が最も大きい九州では、調整後のCO2排出係数が調整前よりも0.019高く出ている。逆に東京では調整後のほうが0.009低くなり、電力の利用者はCO2排出量の点で固定価格買取制度の恩恵を受ける。
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