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ガス小売事業者の登録申請が始まる、関西電力が早くも名乗り:動き出す電力システム改革(65)(3/3 ページ)
電力に続いて都市ガスの小売全面自由化が目前に迫ってきた。政府は自由化に先立って8月1日からガス小売事業者の登録申請を受付開始した。いち早く申請を出したのは関西電力で、電力と都市ガスのセット販売に備える。一方で都市ガスの大手5社は自由化後に適用する託送料金の認可を申請した。
託送料金の水準はガス料金の4割程度に
託送料金はガス会社が導管の運営にかかる原価をもとに単価を設定する。東京ガスが申請にあたって試算した家庭向けの託送料金の水準は、現行のガス料金に対して40%前後である(図6)。これは電力会社が送配電ネットワークの使用料として小売電気事業者から徴収する託送料金の比率と同程度だ。
大阪ガスの託送料金も家庭用では40%程度を見込んでいる。ただし業務用では20%以下になる(図7)。この点も電力会社の託送料金と同様で、小口の需要家を対象にするほど託送料金の割合は高くなるが、その差は都市ガスのほうが電力よりも大きい。
実際に大阪ガスが申請した託送料金の単価を見ると、すでに自由化されている年間10万立方メートル以上の契約と比べて、家庭向け(年間3000立方メートル以下)は6倍以上に設定されている(図8)。電力の場合は家庭向けの低圧と企業向けの高圧の託送料金の単価の差は2倍程度に収まる。
電力の送配電ネットワークと都市ガスの導管ではコストの構造に違いがあるため、単純に比較することはできない。とはいえ電力会社をはじめ家庭向けのガス市場に参入する事業者からは不満の声が出そうだ。政府はガス会社からの申請に対して修正指示を出す見通しで、12月中に託送料金を認可する。
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