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北海道の水素エネルギー普及計画、2040年までのロードマップ:自然エネルギー(2/2 ページ)
太陽光からバイオマスまで再生可能エネルギーの資源に恵まれた北海道で、水素エネルギーの普及を目指す長期的な取り組みが始まる。再生可能エネルギーから作った水素を道内全域に供給できるサプライチェーンを構築する計画だ。2040年までに道外を含めた広域の水素供給体制も実現させる。
水素の製造可能量は消費量の2倍にも
続く第2ステップ(STEP2)は2030年までの10年間を対象に、水素サプライチェーンを広域に拡大する。第1ステップで取り組んだ実証事業の結果をふまえて、風力・小水力・バイオガスで作った水素の地産地消モデルを各地域に展開していく(図5)。大消費地の都市部に定置式の水素ステーションを増やすのと同時に、水素を貯蔵して遠隔地まで輸送するシステムの構築も進める予定だ。
北海道には地域ごとに再生可能エネルギーが分布している。西側の日本海沿岸は海からの強い風を利用できる風力発電、一方の東側に広がる太平洋・オホーツク海沿岸は日射量が多くて太陽光発電に適している(図6)。酪農や林業が盛んな東部ではバイオマス、さらに内陸の山間部を中心に地熱と小水力発電の資源も豊富にある。それぞれの地域の特性に合わせて、再生可能エネルギーから作った水素を地産地消するモデルを展開できる。
北海道庁の調査によると、道内で1年間に製造可能な水素の量は北海道全体のエネルギー消費量と比べて最大で2倍程度を見込める。水素の製造が各地域で活発に始まれば、消費しきれない水素が大量に余る可能性がある。2030年からの第3ステップ(STEP3)では、道内の全域に水素サプライチェーンを構築するのと合わせて、道外にも水素を供給できる広域の輸送システムを完成させる(図7)。
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