超省エネ社会に貢献、「ダイヤモンド」パワーデバイスの実用へ前進:省エネ機器(2/2 ページ)
さまざな機器の省エネを実現するとして、高性能化に期待が掛かるパワーデバイス。実用化はまだ先とみられているが、「究極のパワーデバイス材料」として注目されているのがダイヤモンドだ。金沢大学などの共同研究グループは。こうしたダイヤモンド半導体を用いたパワーデバイスの実用化で課題となっていた反転層チャネルMOSFETの作製に成功した。
ノーマリーオフ特性を確認
今回、研究グループはダイヤモンド半導体を用いた反転層チャネルMOSFETの作成に取り組んだ。MOSFETとは、金属と酸化膜、半導体からなる界面を持つ電界効果トランジスタのこと。このMOSFETのゲート(酸化絶縁膜の上に金属の電極をつけた部分)に、母体である半導体と同じ極性のゲート電圧をかけると、MOS界面に少数キャリアが蓄積し、母体と反転した極性のチャネル(低抵抗層)が形成される。これが「反転層チャネル」である。パワーデバイスにおいて重要なノーマリーオフ特性を持つため、現在普及しているトランジスタの多くは反転層チャネルMOSFETである。
研究グループは、ダイヤモンドを成長させる手法の1つである「マイクロ波プラズマ化学気相成長法」を用いてn型ダイヤモンド半導体を高品質化した。さらに「ウェットアニール」という熱処理技術で酸化膜およびダイヤモンド界面の高品質化を図り、反転層チャネルダイヤモンドMOSFETを作製。さらにその動作実証にも成功した。
作製したMOSFETの動作を調べると、ノーマリーオフ特性を確認できた。ゲートにかける負電圧を大きくしていくと、MOS界面のn型ダイヤモンド半導体に空乏層が広がり、さらに負電圧を大きくすると少数キャリアである正孔がドレイン・ソース領域から流れ込むことで反転層チャネルが形成され、ドレイン電流が流れることがわかった。さらにドレイン電流の理想的な飽和特性、高いon/off比を確認できたという(図2)。
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