最大60MWの電力を作る小型タービン、バイオマス発電所で第1号が稼働:蓄電・発電機器
秋田市の木質バイオマス発電所で最新の小型タービン発電機が稼働した。発電能力は20MWに達して東北のバイオマス発電では最大級だ。発電機メーカーの明電舎が開発した新型機の第1号で、回転部分の構造を改良してエネルギーの変換効率を高めた。60MWまでの電力を作ることができる。
新開発の小型タービン発電機を導入した場所は、秋田港に近い工業団地の中にある。地域の間伐材などを燃料に利用する木質バイオマス発電所で、2016年5月に運転を開始した(図1)。発電能力は20.5MW(メガワット)でバイオマスでは規模が大きく、年間に4万世帯分に相当する電力を供給できる。
この発電所では木質バイオマスを燃やしてボイラーで蒸気を発生させて、蒸気の力でタービンを回して電力を作る。タービンは13段のブレード(羽根)を重ねた構成で、1分間に最大7000回転しながら同軸の発電機を回す仕組みだ(図2)。タービン発電機としては小型にできていて、発電所の建屋内の一角に収まっている。
明電舎が開発した「明電4極同期発電機」を採用した。同期式の発電機は中心部にある「固定子」の周りを「回転子」が高速に回転する構造になっている(図3)。固定子と回転子のあいだに発生する磁界の力で回転しながら、固定子と回転子の巻線(コイル)に電流を発生させる原理だ。
4極同期発電機は磁界を発生させる磁極の数が4つあるタイプで、それに合わせて回転子の形状も4方向に対称になっている。従来は円筒型の回転子を採用する発電機が多かったが、明電舎は4つの磁極が突き出る「突極型」に変更した(図4)。突極型は回転に伴う機械エネルギーの損失を少なく抑えることができるほか、回転子の軸になるシャフトの加工と巻線の製作工程を並行に進めて納期を短縮できる利点がある。
突極型の回転子を採用したことにより、円筒型と比べてタービンと発電機のあいだのエネルギーの損失を20%以上も低減できた。エネルギーの変換効率は98.3%に達して業界でトップクラスの水準である。同時に構造がシンプルになって発電機全体が小型になり、従来の製品と比べて重量を30%軽くすることができた。
発電能力は10〜60MWの範囲で調整できて、蒸気タービンのほかにガスタービンとしても使える。今後さらに改良を加えて発電能力を70MWまで拡大する予定だ。電力の周波数は東日本の50Hz(ヘルツ)と西日本の60Hzの両方に対応する。発電機の冷却方式は水冷と空冷のどちらでも可能になっている。
関連記事
- 日本海に洋上風力発電が広がる未来、地熱とバイオマスでも電力を増やす
秋田県の沖合3カ所で洋上風力発電所の建設計画が進んでいる。最大で150基以上の大型風車を日本海に展開する。陸上でも風力発電が拡大する一方、地熱やバイオマス発電の開発プロジェクトが活発になってきた。太陽光と小水力発電を含めて再生可能エネルギーの導入量を10年間で倍増させる。 - 岩手県に国内最大級のバイオマス発電所、地域雇用と11万世帯分の電力を生む
東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県南部の大船渡市に、太平洋セメントとイーレックスが国内最大級となる出力75MWのバイオマス発電所を建設する。被災した太平洋セメントの工場内に建設するもので、2019年秋から年間11万世帯分の電力を発電する見込みだ。発電事業の開始に伴い地元から従業員を採用するなど、復興を進める東北経済の活性化にも寄与する。 - 国内最大級の木質バイオマス発電所、東京湾岸で8万3000世帯分の電力
電力の大市場を抱える東京湾岸の工業地帯に、発電能力49MWの木質バイオマス発電所が営業運転を開始した。昭和シェル石油グループが製油所の跡地に建設した発電所で、電力事業を拡大する戦略の一環だ。燃料は海外から輸入する木質ペレットとパームヤシ殻を利用する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.