エネルギー・電力改革と福島・熊本復興を基盤に、2017年度の経済産業政策:法制度・規制(2/2 ページ)
経済産業省は2017年度の予算案のベースになる経済産業政策の骨子をまとめた。“道半ば”のアベノミクスを加速させるために、IoTの活用による「第4次産業革命」に向けた投資の拡大など4分野の重点テーマを掲げる一方、基盤の政策としてエネルギー・電力改革と福島・熊本復興を推進していく。
第4次産業革命でGDPを30兆円増やす
加えて経済産業省は日本の産業構造を抜本的に変革する「新産業構造ビジョン」を策定中だ。IT(情報技術)による第3次産業革命に続いて、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの最新技術を駆使した第4次産業革命で世界をリードすることが最大の目標になっている(図5)。
4月に公表した中間整理段階の報告書によると、第4次産業革命を通じて高付加価値・高成長型の産業構造に転換できれば、2020年度のGDP(国内総生産)を547兆円から592兆円へ拡大できる見込みだ(図6)。そのうち30兆円が第4次産業革命による付加価値で生み出される。
新産業構造ビジョンの戦略分野は4つ挙げられている。既存の産業を横断する形で「健康を維持する」「移動する」「スマートに手に入れる」「スマートに暮らす」がテーマだ(図7)。この中でエネルギーが最も深く関係するのは、4つ目の「スマートに暮らす」である。
全国すべての住宅でスマートメーターの設置が完了する2024年を契機に、電力の利用データを生かした情報サービスや関連機器の市場が拡大していく想定だ(図8)。スマートメーターは各家庭を結ぶIoTの中で情報発信源の役割を担う可能性が大きい。IoTが拡大してデータの活用範囲が広がると、医療・介護や住宅・生活関連産業全般に波及効果をもたらす期待がある。
経済産業省は現在の日本が第4次産業革命のグローバル競争に勝てるかどうかの「分かれ目」にいると認識している。そうした危機感を背景に、9月から新産業構造ビジョンの検討を再開して、2030年に向けた長期戦略をまとめる予定だ。
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