逆潮流で電気をシェア、住宅蓄電池を統合して街を仮想発電所に:スマートシティ(2/2 ページ)
積水化学は茨城県つくば市の「スマートハイムシティ研究学園」でバーチャルパワープラント(VPP)を構築する実証試験を行う。太陽光発電設備を備えた20棟の住宅の蓄電池を統合制御し、街全体で電力を効率的に利用する。蓄電池から既存電力網に逆潮流を行い、その影響度なども検証していく。
3つのポイントを検証
実証試験における主な検証のポイントは3つある。1つ目が各住宅のPVで発電した電力を、いかに効率よく活用できるかという点だ。それぞれの住宅では、時間帯や天候によっては発電不足や余剰電力が発生している。そこで住宅とは異なる電力需要カーブを持つ事業所と連携させることで、各住宅の蓄電池にためきれない余剰電力や、住宅側の需要が低い時に蓄電池電力を事業所へ送るなどして利用効率を高める。同時にピークカット効果や、TEMSの性能も確認する(図3)。
2つ目が既存電力網に対する逆潮流の影響の検証だ。逆潮流とは太陽光発電などによる電力が系統側に逆流すること。最適に制御しなければ電圧の上昇などにより、電力品質に影響が出る可能性がある。今回の実証ではTEMSで蓄電池を制御しながらこの逆潮流を意図的に行うことになる。
積水化学では「北九州スマートコミュニティ創造事業」で、家庭用蓄電池から自営線への電力の逆潮流の検証を行っている。同社のTEMSはその成果を活用して開発したものだ。しかし今回の実証試験は、自営線ではなく既存の配電網に対して逆潮流を行う。そこで今回はTEMSと蓄電池を用いた逆潮流が、実用レベル(既存配電網)においてどのような影響を与えるかを検証していく。
3つ目が実証に参加する各住宅およびそのユーザーに対するメリットの創出だ。VPPを構築しても、実際のユーザー側にメリットがなくては普及は見込めない。今回の実証では各住宅に対して、専用電気料金体系を用意するなどして、経済的なメリットを付与する計画だ。こうした施策によるユーザー側の満足度や、VPP運営に掛かるコストなども検証していく。
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