再生可能エネルギーで差別化する新電力、価格を超えた価値をアピール:自然派新電力が開くエネルギーの未来(1)(3/3 ページ)
2016年4月から全面自由化された電力小売市場が、新たな局面を迎えている。スイッチング件数の伸びに勢いがなくなり、新電力各社は“お得感”だけではない新たな価値を模索している。そんな中、自然エネルギーを前面に出した新電力会社が好調だ。本連載ではさまざまなスタイルで事業展開を図る、自然派新電力についてリポートする。
電気を選ぶという消費行動が、日本の電源構成を変えていく
そもそも電力自由化は電力システム改革の一環であり、その目的は、単に電気代を下げることにあるわけではない。日本において電力システム改革の動きが加速した背景には、2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故がある。従って、そこには災害に強い電力システムを構築するという大きなテーマが掲げられており、再生可能エネルギー(分散型電源)の導入拡大もそれを具現化する重要な要素と位置づけられている。
日本のエネルギー政策の中長期的方針を示した「エネルギー基本計画」(2014年4月閣議決定)にも、次のように明記されている。「地域を越えた広域的な系統運用、競争の促進による電気料金の最大限の抑制、分散型電源などの多様な電源の活用、需要家のニーズに応じた多様で効率的なサービスの提供、それによる需要の変化に応じた効率的な供給等、柔軟性のある電力供給が強く求められたにも関わらず、地域ごとに独占事業者が集中管理する電力供給体制では十分に対応できないという従来の電力システムの抱える様々な限界が明らかになった」。
電力システム改革は、この限界を突破するためのものでなければならない。こうした考え方のもと、電力自由化については、その意義を以下のように記している。
「需要家が多様な選択肢から自由にエネルギー源を選ぶことができれば、需要動向が供給構造におけるエネルギー源の構成割合や供給規模に対して影響を及ぼし、供給構造をより効率化することが期待される」
出典:経済産業省「エネルギー基本計画」
つまり電力自由化においては、もともと一般消費者(需要家)による“エネルギー源の選択”が想定されているのであり、小売電気事業者には、それを可能にする電力メニューが求められているのである。一方で、“電気を選ぶという消費行動が国のエネルギー構成を変えることに結びつく”という事実は、価格だけでは動かない消費者を少なからずスイッチングに向かわせている。自然派新電力は、これを捉えて成功に結びつける。本連載では次回以降、そうした新電力会社を個別に紹介していく。
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