人工衛星が観測したCO2排出量の増加、中国が突出、東京でも確認:法制度・規制(2/2 ページ)
日本のJAXAなどが運用する温室効果ガス観測衛星「いぶき」の新たな解析結果がまとまった。大気中の観測データをもとに、火力発電などによる人為的なCO2の濃度を地域ごとに推定した。CO2濃度が最も高かったのは中国の北東部、次が米国のロサンゼルスで、東京でもCO2濃度の上昇を確認した。
大気中のCO2濃度が上昇を続ける
「いぶき」が観測した5年半のデータをもとに、人為起源CO2の濃度が平均1ppm(大気中に含まれる比率が100万分の1)以上になる領域が複数に及ぶ地域を特定したところ全世界で7カ所あった。各地域の最大値を比較すると、最も高い場所は北京を含む中国の北東部で6.2ppmに達していた(図3)。
図3 高濃度の人為起源CO2を観測した地域とCO2濃度の最大値(画像をクリックすると図2の地図上の番号と緯度・経度も表示)。1度グリッド:赤道上で100キロメートル四方に相当。日本は参考データ。出典:JAXA、NIES、環境省
2014年にも「いぶき」の観測データをもとに人為起源CO2濃度を推定したが、その時点では2012年までの3年半の平均で同地域の最大値は3.8ppmだった。2013〜2014年の2年間で人為起源のCO2排出量が大幅に増えた可能性がある。
その次にCO2濃度が高かった地域は、米国の西海岸で最大の都市ロサンゼルスだ。同市の周辺には大規模な油田が多数あったほか、米国の中でも自動車の交通量が極めて多い。ただし前回2014年の推定時には4.5ppmだった人為起源CO2濃度が今回は3.5ppmに低下している。
東京の都市部では他の地域よりも観測データ数が少なかっために推定手法を変えて算出した結果、人為起源のCO2濃度は0.5ppmだった。中国や米国の大都市と比べれば低いとはいえ、人為的に排出したCO2の濃度が一定のレベルで確認できる状況になっている。
JAXAなどは「いぶき」の観測データをもとに、地球を取り巻く大気全体のCO2濃度の解析結果を月ごとに発表している。2015年12月には月平均のCO2濃度が初めて400ppmを超えた(図4)。2009年5月の観測開始から6年半のあいだに15ppmも上昇している。
産業革命が起こる以前の18世紀までは大気中のCO2濃度は約280ppmで一定だったことがわかっている。植物の呼吸や海洋からの排出などによる自然起源のCO2で、産業革命以降に人為起源のCO2が増え続けている。「いぶき」の観測データを使って高精度にCO2濃度を推定することによって、国や地域のCO2排出量を把握しながら今後の地球温暖化対策に役立てる。
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